ヒトに寄生し,国内で遭遇しうる条虫症としては,日本海裂頭条虫症,テニア症(有鉤条虫症,無鉤条虫症,アジア条虫症),マンソン裂頭条虫症などがある。この中で最も頻度の高いものは日本海裂頭条虫症で,本症はサケやマスの生食,または不十分な加熱で経口摂取することで感染する。日本海裂頭条虫は,全長数メートルにもなる大型の寄生虫で,サナダ虫と言われるように真田紐のような外観である。組織への侵入性がなく,症状は軽微であることが多い。近年,テニア症のうち,有鉤条虫症と無鉤条虫症はほぼ国外感染例であるのに対して,アジア条虫症は豚レバーの生食が原因と思われる国内感染例が多い。
食事歴(どこで何を食べたか)について詳しく問診する。患者が持参した虫体や駆虫後に排出された虫体の形態から診断する。日本海裂頭条虫の場合,排便時に紐状の虫体が肛門から垂れ下がることが多いが,無鉤条虫の場合,分離した体節が糞便や便器内で活発に動いていることが多い。
駆虫にはビルトリシドⓇ(プラジカンテル)を経口投与する方法と,十二指腸ゾンデを用いてガストログラフインⓇ(アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン)を注入する方法がある。ガストログラフインⓇは放射線被曝の問題や苦痛が大きいため,日本海裂頭条虫症に対する治療の第一選択はプラジカンテルの単回投与である。
また,小児に対するガストログラフインⓇ注入法は侵襲が高く勧められないため,プラジカンテルによって駆虫する。一方で,プラジカンテルの妊婦に対する安全性が確立されておらず,通常は分娩後に駆虫を行う。また,プラジカンテルは母乳へ移行することがあり,プラジカンテルを投与した場合,当日を含め72時間は授乳を中止(母乳の搾乳破棄)する必要がある。
治療効果判定は,虫体の頭部が完全に排出されたかを確認する。日本海裂頭条虫症では,治療1~2カ月後に便検査を再び行い虫卵の陰性を確認する。
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