type Ⅰ~ⅩⅢに分類される旋尾線虫幼虫のうち,ヒトに寄生して病害を及ぼすのはtype Ⅹ(Ⅹ型幼虫)である1)。旋尾線虫Ⅹ型幼虫の寄生が確認されている魚介類はホタルイカ,スルメイカ,ハタハタなどが知られているが,内臓とともに生食するホタルイカが重要な感染源である1)。ホタルイカの漁期(3~6月)と患者発生が重なる季節性があることも特徴である。
旋尾線虫Ⅹ型幼虫は,ヒト体内で成虫にならず幼虫のまま種々の組織を移動し病害を起こす(幼虫移行症)。皮膚の線状爬行疹(creeping eruption)や移動性皮下腫瘤がみられる皮膚型と,麻痺性腸閉塞を起こす内臓型の病型を呈する。稀に眼の病変がみられる。
寄生虫学的に旋尾線虫Ⅹ型幼虫の成虫は長らく不明であったが,最近,Crassicauda giliakianaであることが示された2)3)。
潜伏期は数時間~2日程度である。症状は腹痛,嘔気・嘔吐などで旋尾線虫X型幼虫による腸閉塞と診断するには,発症月と食歴の聴取がポイントである。アニサキスによる急性腹症との鑑別にも食歴の聴取が重要である。
全体の2/3を占める。皮膚の線状爬行疹や移動性皮下腫瘤が典型的な症状であり,水疱を伴うこともある。潜伏期は2週間程度である。線状皮疹の移動速度は1日に数cmと,顎口虫に比較して速度が速い。同様の皮膚病変がみられる寄生虫症に,動物由来の鉤虫(イヌ鉤虫やブラジル鉤虫)感染,顎口虫症,肺吸虫症,マンソン孤虫症がある。皮膚の所見のみで原因寄生虫を鑑別することは困難であり,食歴や渡航歴の有無が重要な情報となる。
これまでに国内では4例報告されている。いずれも前眼房に虫体が認められ,虹彩毛様体炎を伴っていた。
残り847文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する