顎口虫はイヌ,ネコ,ブタ,イノシシなどを終宿主とする寄生虫である。ヒトへの感染は,幼虫を宿す第2中間宿主の淡水魚や両生類,もしくは待機宿主となる肉食性のヘビや鳥類の生食(不完全な加熱調理も含む)が原因となり,感染した幼虫が体内を移行することで発症する。わが国では日本顎口虫とドロレス顎口虫が問題となる。2022年に,「シラウオ」の生食により感染した,300例を超える事例が国内で発生したことは記憶に新しい。
皮膚爬行症を引き起こす。感染した顎口虫の種類により,皮下組織深部を移行することで生じる皮膚の浮腫性変化のほか,浅い真皮を移行する際には線状爬行疹をきたすなど,多様な皮膚症状を呈する。このほか,眼球,中枢神経などの全身を移行し,発熱,視力低下,痙攣,筋肉痛などをきたす。
皮膚爬行症は肉眼で観察できるが,本症と特定することはできない。好酸球増多および血清非特異的IgEの上昇がみられるほか,ペア血清を用いた抗顎口虫抗体の濃度上昇を確認することは診断に有意義である。しかしながら,様々な寄生虫との交差反応がみられることから偽陽性も多く,抗体検査だけでは正確な診断は困難である。
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