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エキノコックス症(包虫症)[私の治療]

No.5148 (2022年12月24日発行) P.44

永坂 敦 (市立札幌病院感染症内科/理事)

登録日: 2022-12-23

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  • 世界中で蔓延している条虫感染症で,イヌ科の動物から伝播する人獣共通感染症である。4種類の病原体が存在するが,病像を呈するのは単包虫(Echinococcus granulosus)と多包虫(E. multilocularis)の2種である。単包虫は世界中で認めるが,特に中国西部に多い。日本には存在せず輸入感染症である。多包虫は北半球に分布し,日本ではほぼ北海道に限局し,年20数例の発生をみる。しかし愛知県から2014年に,犬のエキノコックス症が報告された。その後,知多半島で捕獲された野犬からエキノコックス感染が8件報告されていて,限局的ではあるが北海道外の広がりが指摘されている。幸いヒトへの感染報告はない。

    ▶診断のポイント

    包虫症の診断では,超音波検査が非常に有用である。

    単包虫症は囊胞病変が基本で,ほとんど肝臓に病変をつくる。WHOは超音波所見をもとに5型に分類し,治療方針にも言及している。1型は囊胞内部にエコー反射性の浮遊物質(hydatid sand)が存在する。2型は囊胞がhoneycomb様となり多数の隔壁を認める。3a型は囊胞の無エコー領域に漂う膜状構造物(water lily sign)を認め,病態の活動性が低下してきた移行期を意味する。3b型は娘結節を伴いエコー内部に実質部分を含む病巣である。4,5期は非活動期である。4期の特徴は,無エコー帯がらせん構造をしているball of wool imageである。5期は石灰化像を呈する。

    多包虫症の病変は肺,肝臓に多く無症状に進行することから,健康診断で肝臓の囊胞性病変で指摘されることが多い。画像的には囊胞部分,実質部分,石灰化など多彩な囊胞像を呈する。このような多彩な囊胞像を呈し,かつ北海道在住歴があれば本感染症を疑う。続いて血清検査を行う。一次スクリーニングとしてELISA法で行い,陽性例には二次検査(確認試験)としてウェスタン・ブロッティング(WB)を行う。これらの血清検査は,通常の外注検査では取り扱っておらず,北海道臨床衛生検査技師会立衛生検査所か北海道立衛生研究所に直接申し込む必要がある。単包虫症の血清診断はまだ実用化されてない。

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