□毛包における深在性細菌感染症は,その炎症の範囲により毛包炎→癤(せつ)→癤腫症→癰(よう)と定義される。つまり,毛包1個の炎症;癤,毛包数個の炎症;癰腫症,鶏卵大から手掌大に拡大した炎症局面;癰である。
□最も多い原因菌は黄色ブドウ球菌で,表皮ブドウ球菌,溶血レンサ球菌などがこれにつぐ。以前,癤や癰は皮膚科医が頻繁に経験するcommon diseaseであったが,最近は抗菌薬の普及により,健常人での癤や癰は減少している。ただし,悪性腫瘍や糖尿病患者などに発症した毛包炎が癤や癰まで進行するケースは今でも多くみられる。
□さらに近年の分子標的薬の普及に伴って,無菌性の毛包炎や癤を経験する機会が増えてきている。ちなみに慣用語の面疔(めんちょう,めんちょ)は,ようの状態に最も合致する言葉である。
□毛孔一致性の紅斑・丘疹(毛孔炎)を初発とし,次第に発赤,熱感,腫脹を伴い,中心に膿点や痂皮を生じる(癤)(図1)。それが複数の毛孔の範囲に拡大し(癤腫症),鶏卵大から手掌大の範囲まで拡大して表面壊死や膿汁排出,痂皮の付着などを伴う癰(図2)になる。癤や癰では全身性の発熱を伴うこともある。
□細菌培養を行い,原因菌を同定することによって診断が確定される。さらに,抗菌薬に対する感受性試験をもとに治療法が決定される。
□血液検査では白血球数上昇,核の左方移動,CRP上昇などがみられる。ただし,筋膜や筋肉へ炎症が及んだ場合にはCPKやアルドラーゼなど筋原性酵素の上昇がみられることもある。その場合にはCTやMRIなどの画像検査にて炎症の範囲を確認することが大切である。
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