表皮細胞間接着において重要な役割を担うデスモグレイン(desmoglein:Dsg)に対するIgG型自己抗体によって,皮膚・粘膜に水疱が生じる自己免疫疾患である。自己抗体が産生される機序は不明である。主要な病型として尋常性天疱瘡,落葉状天疱瘡,腫瘍随伴性天疱瘡がある。
臨床症状,病理組織学的所見,免疫学的所見の3つを確認することが重要である。
①臨床症状:皮膚および口腔粘膜に多発する水疱・びらん
②病理組織学的所見:表皮細胞間接着障害(棘融解)による表皮内水疱
③免疫学的所見:直接蛍光抗体法で皮膚または粘膜の表皮細胞膜表面にIgGの沈着を確認。血清中からDsgに対する自己抗体を検出
治療に際して,その到達目標を明確にしておくことが重要である。すなわち,「プレドニゾロン(PSL)10mg/日以下および最低限の併用療法(免疫抑制薬など)により天疱瘡の皮疹のない状態」である「寛解」をめざす。その達成のためには,十分な初期治療を行うことが必要と考えられており,診療ガイドラインに示されているように,治療導入期と治療維持期にわけて治療戦略を立てていく。
病勢を制御することが可能となり,ステロイド減量が行えるまでの治療初期を指す。初期治療はPSLが第一選択で,中等症および重症ではPSL 1.0mg/kg/日の内服が標準的な治療開始量である。初期治療で2週間ほど経過をみて治療効果が不十分と判断された場合は,速やかに免疫抑制薬(アザチオプリンなど),免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin:IVIG),血漿交換療法,ステロイドパルス療法,リツキシマブ等の追加を考慮する。治療導入期における病勢評価および治療効果判定には,臨床症状スコアであるpemphigus disease area index(PDAI)を用いる。治療導入期には,週1回程度はPDAIを用いて評価,治療効果を判定し,追加治療の必要性を検討する。
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