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爪白癬の新常識:巻き爪への対応[〈プライマリ・ケア医が知っておくべき〉クイズで学ぶ 皮膚科診療の“新常識”(3)]

No.5244 (2024年10月26日発行) P.6

佐藤友隆 (帝京大学ちば総合医療センター皮膚科教授)

登録日: 2024-10-24

最終更新日: 2024-10-23

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Q


80歳代,女性。老人ホームの医師から巻き爪の良い治療があるので皮膚科に紹介すると言われ受診。足の爪が自分で切れず,施設のスタッフでも切れない(図1)。肝機能,腎機能に大きな問題なし。
本患者において,まず行うべき治療は以下のうちどれか。


リネイル®ゲル塗布
適切な長さに爪を切り,KOH直接鏡検を施行
爪白癬の外用薬塗布
巻き爪マイスター®の装着

診断

巻き爪分野において,リネイル®ゲルなど新しい治療法が注目されてきているが,そもそも診断が重要であり,まずは爪切りとKOH直接鏡検を行うことが肝要である。

診断については,まず皮膚真菌症を疑うことが大切である1)。疫学的には白癬が最も遭遇頻度が高い。①足白癬,②爪白癬,③体部白癬の順番で理解する。感染症であるため,実臨床ではそれぞれの病型が合併していることも多い。

①足白癬の鑑別疾患には湿疹,接触皮膚炎,汗疱,掌蹠膿疱症,紅色陰癬などが挙がる。足白癬は爪白癬を伴っている症例が多いため,20本の爪すべてを診察することが重要である2)。診断にはKOH直接鏡検が必須となる。爪に変化があれば,爪からも鏡検を行う。水虫と自己判断している患者は,むしろ足白癬でないことが多い。

加えて,初診時に既に抗真菌薬を外用しているか否かが重要となる。抗真菌薬を外用していて鏡検陰性の場合は,湿疹,膿痂疹,紅色陰癬の可能性を考える。外用はひとまずすべて休薬し,何も外用しないで1週間後に再度鏡検を行う。初診時に紅色陰癬など細菌感染を疑うのであれば,細菌培養を行い短期抗生剤の内服としてみるのもよい。明らかに市販の外用薬による接触皮膚炎であれば,ステロイド外用と抗アレルギー薬の内服を行う。趾間がびらんになるほど強い力で洗浄している症例には,皮膚バリアの破壊によって白癬に感染しやすくなることを説明すると理解されやすい。

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