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褥瘡[私の治療]

No.5235 (2024年08月24日発行) P.50

前川武雄 (自治医科大学附属さいたま医療センター皮膚科准教授)

登録日: 2024-08-24

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  • 持続的な外力が身体に加わり圧迫されることによって皮膚や軟部組織の血流が低下すると,組織が阻血性壊死を起こし,褥瘡が発症する。骨突出部位は体圧がかかりやすいため,仰臥位での仙骨部や踵骨部,坐位での坐骨部や尾骨部,側臥位での大転子部や腸骨部などに好発する。近年,人工呼吸器やカテーテルなどの医療機器の圧迫により生じる創傷を,医療関連機器圧迫創傷(medical device related pressure ulcer:MDRPU)と呼び,従来の褥瘡とともに,褥瘡の一種として取り扱う。

    ▶診断のポイント

    通常,骨突出部位に生じた皮膚損傷であり,経過と合わせ診断は容易なことが多い。重要なのは褥瘡の評価であり,DESIGN-R2020を用いて,正確に評価する必要がある。すなわちdepth(深さ),exudate(滲出液),size(大きさ),inflammation/infection(炎症/感染),granulation(肉芽組織),necrotic tissue(壊死組織),pocket(ポケット)の7項目について,それぞれの重症度を評価し,また治療の効果判定にも使用する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    圧迫が直接的な原因であるため,まずは除圧することから開始する。体位,ポジショニング,マットレスなどを見直すことにより持続する圧迫を取り除く。また,低栄養状態では褥瘡の改善は見込めないため,栄養管理も重要である。その上で適切な局所治療を行う必要があるが,局所治療は褥瘡の状態に応じて様々であり,DE SIGN-R2020の評価に応じた治療選択を行う必要がある。

    最も優先すべきは感染(I)であり,感染を伴う場合は抗菌作用を持つ外用薬を使用し,状況によっては抗菌薬の全身投与も検討する。感染がない場合,次に優先すべきは壊死(N)の有無と滲出液(E)の量である。壊死があれば壊死組織を融解する外用薬や創傷被覆材を選択し,滲出液が多い場合には滲出液吸収作用を持つ外用薬や創傷被覆材を選択する。壊死や感染のない褥瘡であれば,滲出液の量に応じて使用する製品を選択し,深さ(D)や大きさ(S)の改善を図っていく。ポケット(P)は外用薬や創傷被覆材だけでの改善が見込めないケースも多く,外科的治療や局所陰圧閉鎖療法などについても検討する必要がある。

    WEBコンテンツ「褥瘡をエコーで診る」

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