光線過敏症は,健常皮膚では異常を示さない範囲の光線(主にUVAとUVB波長)により,何らかの内因性または外因性の原因によって異常な皮膚反応が生じる疾患群である。このうち乳児や小児にみられる遺伝性や代謝性の光線過敏症は,光防御機構の一部が先天的に欠損していることにより引き起こされる。一方,成人にみられる光線過敏症の多くは,皮膚に後天的に蓄積された外因性のクロモフォア(光を吸収する分子)が,皮膚で特定の標的分子と光化学反応を起こすことにより生じる1)。
光線過敏症をきたす疾患は種々あり,広義には日光曝露によって症状が悪化する皮膚疾患全般を含む。日光曝露が皮疹を誘発しやすいのは顔や頸部,手背~腕などで,紅斑,丘疹,水疱などを生じる。
内因性の疾患には色素性乾皮症,赤芽球性プロトポルフィリン症,晩発性皮膚ポルフィリン症,日光蕁麻疹,多形日光疹,慢性光線性皮膚炎,種痘様水疱症などがある。外因性の疾患には,薬剤性光線過敏症,光接触皮膚炎などが含まれる。光線が疾患の発症に必須ではないが,皮疹の誘発や悪化の要因として作用する疾患も存在し,その中には単純ヘルペス,全身性エリテマトーデス,シェーグレン症候群,天疱瘡などが含まれ,「光線増悪性疾患」と呼ばれる。
光線過敏症の診療においては,各疾患の特徴や好発年齢,適切な検査方法を正確に理解し,確定診断にアプローチすることが重要である。
多くの光線過敏症では,光線照射試験にて最小紅斑量(minimal erythema dose:MED)の低下がみられる。多形日光疹,種痘様水疱症,慢性光線性皮膚炎では反復照射により皮疹が誘発される。
色素性乾皮症には8群の遺伝子変異があり,わが国ではA群とV群が多い。A群では著明なMEDの低下がみられるが,V群ではほぼ正常である。
赤芽球性プロトポルフィリン症は血液や糞便中のプロトポルフィリン値の増加がみられ,FECH遺伝子変異がみつかる。
晩発性皮膚ポルフィリン症では尿中ウロポルフィリン,コプロポルフィリンの増加がみられる。
残り997文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する