鶏眼(いわゆる「うおのめ」),胼胝(いわゆる「たこ」)は,皮膚に加わる持続性の外的刺激を背景として生じる,表皮の過角化病変である1)2)。高齢者やアスリート,糖尿病患者の足底が好発部位だが,持続性の摩擦・圧迫を受ける場所であれば手掌などの別の部位にも出現する。靴や装具の接触部位が最も典型的で,そのほかには筆記用具やゲーム機を把持する手指等,多彩な場所に生じうる。
鶏眼・胼胝いずれも皮膚に黄色調の硬い角化性病変を呈するため,その診断は容易である。皮膚の深部方向へ楔状に過角化を呈して有痛性であるものを鶏眼,平坦に過角化して無痛性であるものを胼胝として区別している。近年の研究成果によって,鶏眼は1個の表皮幹細胞の増殖・分化異常のみで説明できることが報告されている3)。鶏眼では,病変部の皮膚紋理は消失し,表面がやや光沢を帯びる。逆に胼胝では皮膚紋理が増強する。
診断時には,摩擦・圧迫による外的刺激の起こる成因について詳しく病歴聴取する。病変部に慢性刺激を与える靴,義足などの装具,骨の突出,運動歴,生活歴など,鶏眼・胼胝を引き起こす原因を同定する。胼胝では,足底の病変のほかに,坐位の摩擦によって足背に生じる座りだこや,筆記具を持つ利き手の中指末節骨に生じるペンだこがよく知られており,生活習慣が発症に関連する。幼少期から爪甲が肥厚する先天性爪甲肥厚症のように,青年期以降で鶏眼が多発する疾患も知られている。
鶏眼・胼胝の主な鑑別疾患は,足底に生じる尋常性疣贅である。尋常性疣贅は,ヒトパピローマウイルス(HPV)の表皮細胞への感染により,表皮細胞が増殖することによって生じる疾患である。臨床的には表面疣状の角化性丘疹であるが,肉眼あるいはダーモスコピーによる観察で,病変に点状出血を伴っていれば尋常性疣贅と診断できる。鶏眼・胼胝では後述の通り保存的治療が基本だが,尋常性疣贅には液体窒素による凍結凝固療法を行うなど治療法が異なっているため,両者を適切に鑑別することが重要である。特に,尋常性疣贅は接触した別の部位の皮膚に感染しうるため,注意が必要となる。
残り844文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する