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単純疱疹[私の治療]

No.5248 (2024年11月23日発行) P.40

川村龍吉 (山梨大学医学部皮膚科学教室教授)

登録日: 2024-11-22

最終更新日: 2024-11-19

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  • 原因となる単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)には1型(HSV-1)と2型(HSV-2)があり,初感染では約90%が不顕性感染であるが,水疱などの皮疹がみられる場合は重症例が多い。単純疱疹の再発型では,疲労などの様々なストレスや免疫抑制を契機として三叉神経節または腰仙髄神経節に潜伏感染していたHSVが再活性化し,知覚神経軸索を順行して口唇または性器の皮膚・粘膜で増殖する。前駆症状としてピリピリした違和感・疼痛が出現した後,紅暈を伴う小水疱が集簇性または孤立性に出現する。

    ▶診断のポイント

    通常,好発部位である口囲や外陰部の粘膜と皮膚の境界部に水疱・紅斑を認めるため,診断は比較的容易である。診断に迷う場合や非典型例では,イムノクロマト法によるHSV抗原迅速診断キットが有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    再発型単純疱疹は皮膚科領域で最も患者数の多い感染症である。たとえ無治療であっても,宿主免疫によって皮疹出現後96時間ほどで病変部からHSVが検出されなくなることが古くから知られている1)。したがって,治療のポイントは宿主免疫がフル稼働する前に抗ウイルス薬をできるだけ早期に内服することであり,その観点から,あらかじめ処方された抗ウイルス薬を初期症状(前駆症状)に基づき患者判断で服用を開始する治療法(patient initiated therapy:PIT)は,最も合理的かつ有効な治療と言える。

    また,HSVは皮膚以外の神経節などで盛んにDNAの合成・複製をしていることや,保険適用上の理由から,抗ウイルス外用薬を抗ウイルス内服薬に併用することは基本的に行わない。

    【治療上の一般的注意】

    核酸アナログ系の抗ウイルス薬(アメナメビル以外)を腎機能障害患者に投与する場合は,急性腎障害や脳症といった副作用の発現リスクが高まるため,クレアチニンクリアランスによって内服あるいは静注の投与量を調整する。

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