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多発性筋炎・皮膚筋炎[私の治療]

No.5223 (2024年06月01日発行) P.52

笹井(中嶋)蘭 (京都大学大学院医学研究科臨床免疫学)

登録日: 2024-05-31

最終更新日: 2024-05-28

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  • 多発性筋炎・皮膚筋炎は指定難病のひとつであり,自己免疫性の全身炎症性疾患である。主に体幹や四肢近位筋の筋力低下や皮膚症状を呈するほか,発熱・関節痛や臓器障害(肺・心)をきたす。定型的な皮疹(ゴットロン徴候・ヘリオトロープ疹)を伴うものを皮膚筋炎と呼ぶ。

    ▶診断のポイント

    指定難病制度で用いられている診断基準を用いる。補助検査として筋炎特異的自己抗体(抗ARS抗体,抗MDA5抗体,抗TIF1-γ抗体,抗Mi-2抗体)の同定は有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療の目標は,炎症を抑え,筋力を回復し,臓器の障害を防ぐことである。治療は,寛解の導入とその後の維持がある。病型により違いがあるが,一般的には副腎皮質ステロイドが経験的に第一選択薬となる。ステロイドによる効果不十分例や再燃例,あるいはステロイド減量困難例には免疫抑制薬(アザチオプリン,タクロリムス,メトトレキサート,シクロホスファミドなど)が使用される。また,免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin therapy:IVIg)もステロイド治療抵抗例に有効であり,保険適用がある。発症早期からのリハビリテーションに関して有効であるとの報告がある。慢性期のリハビリテーションは炎症の悪化を伴わず,筋力回復に有効である可能性が示唆されている。

    間質性肺炎や嚥下障害といった予後不良因子や筋炎特異的自己抗体による層別化をもとに,病初期からステロイドと免疫抑制薬を併用することで予後の改善やステロイド減量効果が期待される。特に抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の場合,急速進行性間質性肺炎により短期的予後が不良であるため,診断初期より多剤併用免疫抑制治療を開始することが考慮される1)2)。抗TIF1-γ抗体陽性皮膚筋炎で高齢者の場合は悪性腫瘍の併発率が高く,積極的なスクリーニングが勧められる3)

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