円形脱毛症は,成長期毛包の毛球部が炎症によって一過性に破壊されることで脱毛をきたす自己免疫疾患である。男性型脱毛症は,思春期以降に活性型男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の作用で毛周期が短縮し,毛包がミニチュア化するという特徴がある。
円形脱毛症では,その名の通り頭部に円形の脱毛斑が出現する(通常型)が,頭部の生え際に沿って脱毛する場合(蛇行型)や,脱毛が頭部全体(全頭型)または全身に及ぶ(汎発型)こともある。男性型脱毛症では,前頭部の生え際と頭頂部を主体に疎毛を呈する。
ダーモスコピーで病変部皮膚を観察すると,円形脱毛症の急性期(脱毛期)では感嘆符毛,断裂毛や黒点などが観察されるが,固定期(自然な発毛を認めない状態が慢性的に続く時期)では黄色点が主体になる。一方,男性型脱毛症では硬毛の軟毛化が顕著に認められる。また,円形脱毛症の急性期では,ヘアプルテストを行うと,根元が細く変形した成長期毛が容易に抜去される。
円形脱毛症,男性型脱毛症ともに,日本皮膚科学会の診療ガイドラインを参考にしている1)2)。ただし,円形脱毛症では近年著しく治療法が進歩しており,さらに各患者の重症度,病期と年齢に応じて柔軟に治療方針を決定する必要性がある。
〈注意〉
円形脱毛症に対する経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬は,本疾患に関する十分な知識と治療経験を有する皮膚科専門医が処方することが望ましい。男性型脱毛症に関しては,ほぼすべての治療法が保険適用外であることに留意する。
〈禁忌〉
男性型脱毛症に対するミノキシジルとスピロノラクトンによる内服療法は,わが国における有効性・安全性が確立されていないので行うべきではない。
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