日本皮膚科学会の「蕁麻疹診療ガイドライン2018」では,蕁麻疹は4グループ16病型に分類され(表1)1),その臨床症状や診断法は多岐にわたる。このため,正確な診断に基づいて,すべての病型を把握する大規模な疫学調査を実施するのが困難な疾患である。
全人口のおよそ10〜20%が生涯のうちに蕁麻疹を経験するとされており2),本邦における慢性特発性蕁麻疹の12カ月の加重有病率は1.1%と報告されている3)。慢性特発性蕁麻疹の多くは真の原因が不明であり,患者や医師の理解不足から複数の検査が実施されることがあるが,通常,各種検査値は正常であることが多い。性差は,多くの報告で女性に好発し,男性のほぼ2倍と言われている2)。また,多くの統計で,働き盛りの20〜40歳台に好発すると報告されている2)。
蕁麻疹は膨疹,つまり紅斑を伴う一過性,限局性の浮腫が病的に出没する疾患であり,多くは痒みを伴う。個々の皮疹の持続時間は数十分から数時間以内のことが多いが,2~3日持続する例もある。
通常の蕁麻疹に合併して,あるいは単独に,皮膚ないし粘膜の深部を中心に発症する限局性浮腫を特に血管性浮腫と呼ぶ。血管性浮腫は痒みを伴わないことも多く,個々の皮疹は2〜3日持続する。遅延性圧蕁麻疹(持続的な圧迫を加えた部位に,圧迫解除から数十分〜数時間後に膨疹が出現し,数時間から2日間程度持続する蕁麻疹)以外の蕁麻疹や血管性浮腫は,消褪の際,いずれも基本的には跡形もなく消えるのが特徴である。
蕁麻疹では,一般に皮膚マスト細胞が何らかの機序により脱顆粒し,皮膚組織内に放出されたヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が皮膚微小血管と神経に作用して,血管拡張(紅斑),血漿成分の漏出(膨疹),および痒みを生じる。蕁麻疹におけるマスト細胞活性化の機序としてはⅠ型アレルギーが広く知られているが,実際には原因として特定の抗原を同定できることは少ない。
また,蕁麻疹にはⅠ型アレルギー以外に機械的擦過をはじめとする種々の物理的刺激や薬剤,運動,体温上昇などに対する過敏性によるもの(刺激誘発型の蕁麻疹),明らかな誘因はなく自発的に膨疹が出現するもの(特発性の蕁麻疹)などがあり,症例によりこれらの機序のいずれか,または複数の因子が複合的に関与して病態を形成すると考えられる。