【日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会のガイドライン】1)
□中等度以上では,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)もしくはドロスピレノン(DRSP)含有低用量エストロゲン・ プロゲスチン配合薬(LEP)を用いる。
□治療にはカウンセリング・生活指導や薬物療法(精神安定剤,利尿薬,鎮痛薬,漢方薬など)を選択する。
□軽症の場合,あるいは身体症状主体の場合には経口避妊薬(OC)・LEPを用いる。
【NAPSのガイドラインの治療指針】2)(図)
〈第1段階:生活指導〉
□脂質,糖分,塩分,カフェインとアルコールを減らす。
□繊維を多く含んだでんぷん質の食事。
□繊維の多い野菜,果物。
〈第2段階:生活指導,カウンセリング,栄養管理〉
□ストレス管理:リラクゼーション,ヨガ,瞑想,呼吸法,カウンセリング/家族や友人など周囲からの支援。
□補完療法:セイヨウニンジンボクエキス(20~40mg/日),レッドクローバーイソフラボン(40~80mg/日),セント・ジョーンズ・ワート。
□ビタミン・ミネラル:ビタミンB6(最大50mg/日),マグネシウム(250mg/日),カルシウム(1000mg/日)+ビタミンD(10μg/日)。カルシウム+ビタミンDは特に片頭痛に有効。
〈第3段階:薬物療法等〉(わが国で可能な方法)
□心因的手法:認知行動療法。
□薬物療法:ドロスピレノン含有LEP,SSRI。
□症状が重度の場合はPMDDを疑う。他の精神疾患との鑑別・治療の面から,精神科へ紹介する。
□双極Ⅱ型障害が若年女性のPMS・PMDDに併存する場合があり,SSRI投与により躁転化することがある3)。
□LEP投与の際には禁忌症例に注意のこと(OC・LEPガイドライン2015版4)を参照)。
□生活指導,ストレス管理が中心。
□まずは対症療法を行う。鎮痛薬(NSAIDs),便秘薬,抗不安薬などを症状に合わせて頓用。
□治療薬は患者の要望に合わせて選択する。LEP,漢方薬,対症療法は併用可能である。
□コクランレビューによるとSSRI(パロキセチン,セルトラリン,エスシタロプラム)は,PMSの症状軽減に有効であるが,吐き気や無気力などの副作用が頻繁に生じるとされる。
□重症の場合,PMDDを疑う。
□DSM-5のPMDD診断基準の概要を示す(表2)。
□欧米ではSSRIが第一選択である。DRSP含有LEPは,SSRI無効例やSSRIによる治療を望まない症例に対する第二選択。SSRIの無効例の40%に対して,DRSP含有LEPが有効とされる。SSRIやDRSP含有LEPが無効ならば漢方などを考慮する。
□桃核承気湯,加味逍遥散,抑肝散,柴胡加龍骨牡蠣湯など,各用量で食前服用。
□性ステロイドの変動(最も有力な説)。
□セロトニンなどの神経伝達物質の異常(精神症状から)。
□レニン─アンジオテンシン系の異常(水分貯留症状から)。
□エストロゲンはNa貯留や食欲増進などにも働き,月経周期中にむくみや体重増加などの変化をもたらす。
□エストロゲン受容体(ER)は2種類に大別され,ER-αは乳腺・子宮等の女性の生殖に関わる臓器に主として分布するのに対し,ER-βは男女を問わず全身に広く分布しており,より広範な生理的意義を有していると考えられる。
□プロゲステロンおよびその代謝産物は,プロゲステロン受容体のみならず,ER,アンドロゲン受容体,ミネラルコルチコイド受容体,グルココルチコイド受容体など様々なステロイド受容体と結合することが知られ,そのため月経前に種々の身体症状が惹起されると考えられる。
□性ステロイドは神経細胞に作用して神経伝達物質の産生・分泌および,その受容体の発現に影響すると考えられる。
□エストロゲンはセロトニン,ノルアドレナリン,ドーパミン神経系の機能を高めると考えられる。モノアミンであるセロトニン,ノルアドレナリン,ドーパミンはモノアミノ酸化酵素(MAO)によって非活性化されるが,エストロゲンはMAOの働きを抑制する。これにより気分の高揚が起こる。
□プロゲストーゲンはGABA系神経の機能を高めると考えられる。プロゲステロンの代謝産物であるアロプレグナノロンはGABAA受容体の強力なポジティブ・アロステリック・モジュレータで,動物に投与すると抗不安・抗痙攣・鎮静等の作用を示す。PMDDの女性とアロプレグナノロンの関連が報告されている。
1) 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会, 他, 編:産婦人科診療ガイドライン─婦人科外来編2014. 日本産科婦人科学会, 2014,p224-7.
2) Guidelines on Premenstrual Syndrome. The National Association for Premenstrual Syndrome(NAPS). 2011
3) 山西 歩, 他;女性心身医学. 2013;17:311-7.
4) 日本産科婦人科学会, 編:OC・LEPガイドライン2015版. 2015, p38.
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