□絨毛性疾患は,①胞状奇胎,②侵入胞状奇胎(侵入奇胎),③絨毛癌,④胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT),⑤類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT),⑥存続絨毛症の6つに臨床分類される。胞状奇胎以外の絨毛性疾患は,手術や化学療法が必要になるため絨毛性腫瘍と総称されるが,多くは(臨床的)侵入奇胎または(臨床的)絨毛癌である。
□トロホブラストを発生母地とする腫瘍であるため,hCG(human chorionic gonadotropin)を分泌し,hCGが優れた腫瘍マーカーとなる。
□子宮筋層内に増殖浸潤し,血行性に肺転移をきたしやすい性質を有するが,固形がんの中で最も化学療法が奏効する腫瘍のひとつである。
□妊娠に起因する腫瘍であり,生殖年齢の女性に発症するため,妊孕性温存治療が積極的に行われる。
□絨毛性腫瘍で子宮に病変がある場合は,不正子宮出血が主な症状である。
□胞状奇胎後に厳重に管理されていれば,hCG値の測定により症状がまったくなくても絨毛性腫瘍の発症を疑う。
□絨毛癌では,肺出血,消化管出血,腹腔内出血,脳出血などの転移病巣での出血が初発症状となることがある。hCGの測定をしなければ,絨毛癌を疑うことは難しく,摘出組織の病理検査で初めて絨毛癌と診断されることが多い。
□胞状奇胎を含むあらゆる妊娠の終了後にhCG値の上昇を認め,画像検索などで臨床的に侵入奇胎や絨毛癌が疑われるが,病巣の組織所見が得られないために診断を確定できないものをいう。
□病巣の存在を確認できないときには,①奇胎後hCG存続症とし,病巣が確認できる場合には,絨毛癌診断スコア(表1)1)を用いて,②臨床的侵入奇胎または,③臨床的絨毛癌に分類する。奇胎後hCG存続症に対しては,侵入奇胎に準じた化学治療を行う。
□胞状奇胎絨毛が子宮筋層あるいは筋層の血管への侵入像を示すもので,確定診断は組織学的検査による。
□臨床的に病巣が確認されるが,病理組織が得られないまたは不明確な場合には,絨毛癌診断スコア(表1)1)により4点以下の場合には臨床的侵入奇胎と診断される。約1/3の症例では肺転移を認める。
□胞状奇胎後のhCG値管理中に,カットオフ値に達する前の低下不良あるいは再上昇を認め,超音波やCTで子宮筋層内病変や肺転移が認められる場合が最も多い。
□絨毛癌の確定診断は,病巣からの多数の組織片を用いて病理学的に行わなければならない。
□妊孕性を考慮し子宮摘出を行わず,絨毛癌診断スコア(表1)1)により臨床的絨毛癌と診断し,化学療法のみが用いられる症例が増えている。
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