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絨毛性腫瘍[私の治療]

No.5247 (2024年11月16日発行) P.46

新美 薫 (名古屋大学医学部産婦人科講師)

梶山広明 (名古屋大学医学部産婦人科教授)

登録日: 2024-11-18

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  • 絨毛性疾患は,①胞状奇胎,②侵入胞状奇胎(侵入奇胎),③絨毛癌,④胎盤部トロホブラスト腫瘍(placental site trophoblastic tumor:PSTT),⑤類上皮性トロホブラスト腫瘍(epithelioid trophoblastic tumor:ETT),⑥存続絨毛症,に臨床分類されている。胞状奇胎は新たな妊娠のひとつであるが,それ以外の絨毛性疾患は,胞状奇胎や正常分娩などの先行妊娠が原因で発症する腫瘍性疾患である。手術や化学療法が必要になるため,絨毛性腫瘍と総称される。

    ▶診断のポイント

    胞状奇胎を含むあらゆる妊娠の終了後にhCG(human chorionic gonadotropin)値の上昇を認める。画像検索などで臨床的に侵入奇胎や絨毛癌が疑われるが,病巣の組織所見が得られないために診断を確定できないものを存続絨毛症と言う。病巣の存在を確認できないときには,奇胎後hCG存続症とし,病巣が確認できる場合には,絨毛癌診断スコアを用いて,臨床的侵入奇胎または臨床的絨毛癌に分類する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    侵入奇胎や絨毛癌の症例数は12~25/10万出生であり,稀な疾患である。絨毛性腫瘍は症例数の少なさ,迅速な精密hCG測定と独特な化学療法レジメンの必要性などの点から,経験豊富なスタッフのいる施設での治療が望まれる。

    妊娠に起因する腫瘍であり生殖年齢の女性に発症するため,妊孕性温存治療が積極的に行われる。侵入奇胎や絨毛癌は化学療法が奏効する腫瘍のひとつであり,むやみに子宮摘出を行わない。

    侵入奇胎と絨毛癌はともに化学療法を主体とする治療を行うが,絨毛癌は侵入奇胎に比べて予後不良であるため,治療開始前に両者を判別し,適切な治療方針と化学療法レジメンを選択することが重要である。

    絨毛癌は容易に血行性に肺,肝,脳などの全身性転移をきたしやすく,強力な化学療法を徹底的に行う必要がある。投薬の延期がないよう副作用対策をしっかり行うことが肝要である。

    hCGはすぐれた腫瘍マーカーであるため,hCG値の推移を慎重に判断し,化学療法の効果を見きわめることが重要である。

    化学療法中は,血中hCG値を1週間に1~2回,必ず感度の良いキットを用いてmIU/mLの単位で測定すべきである。

    化学療法(特にエトポシドを含むレジメン)による卵巣機能抑制のため高LH/FSHを呈する場合には,下垂体由来とされるhCG-like substanceが寛解直前の低単位hCG測定系に影響を及ぼす可能性がある。血中LH,FSHレベルを測定し,高値であればエストロゲン・プロゲステロン合剤を内服させ,LH/FSHの下降とともにhCGが正常値化するかを確認する。

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