□乳癌は年齢別では40歳代後半から50歳代前半でピークを迎え、女性の癌腫において罹患率は第1位であり、今後も上昇すると予想されている。しかし適切な治療により治癒する割合も高く、10年生存率は7割を超えている。治療は生物学的特徴に基づき、手術、放射線、化学療法、内分泌療法などを組み合わせた集学的治療が推奨される。
□乳房パジェット病は,乳頭乳輪を中心に,紅斑,湿潤,痂皮の形成がみられ,乳管の開口部に発生した乳管上皮由来のがんであり,全乳癌の1%以下である。その治療は非浸潤性乳管癌に準じる。
□腫瘤を自覚することが多く,基本的に痛みは伴わない。
□血性乳頭分泌の原因の多くは良性疾患(乳管内乳頭腫)であるが,腫瘤を伴うものの場合は乳癌の可能性も念頭に置く。
□乳頭の湿疹様変化・びらん・痂皮化を呈する。
□問診:月経・妊娠・出産・授乳歴,既往歴を確認し,家族歴においては遺伝性乳癌卵巣癌症候群を念頭に置き,乳癌と卵巣癌につき聴取する。
□視触診:乳房の左右差,変形,皮膚の陥凹や隆起,発赤や色調変化,浮腫,潰瘍,衛星結節,乳頭の変化などを,坐位にて上肢を下垂→挙上にて観察,背臥位でも触診を行う。乳頭分泌や腋窩リンパ節腫大の有無も確認する。
□マンモグラフィー検査:若年者では高齢者に比して乳腺濃度が高いことが多いため,病変の検出力は劣る。腫瘤,石灰化,構築の乱れなどを確認する。
□乳房超音波検査:体表専用の高周波数(7.5~10MHz)探触子で施行する。境界部の性状,境界部高エコー域,乳腺境界線の断裂,点状高エコー,縦横比などの所見を確認する。乳癌の場合,乳管内の拡がり,多発病変などを確認する。リンパ節転移の評価も可能である。
□MRI検査:1.5テスラ以上の高磁場装置が推奨される。腹臥位での撮像となり,専用のコイルとガドリニウム造影剤が必須である。良悪性の鑑別診断のほか,乳房内の拡がり診断や,化学療法の効果判定などに用いられる。T1強調,T2強調,拡散強調,造影後T1強調(ダイナミック撮像)画像などから病変を診断する。ガドリニウム造影剤は,喘息患者や腎機能障害患者に対しては禁忌である。
□CT検査:MRIに比して撮像時間が短く,背臥位での撮影である。組織コントラストが低いことや,放射線被ばくなどの短所がある。
□PET(positron emission tomography)検査:18F-FDGを体内に投与し,その分布や動態を画像化する核医学診断であるが,原発巣の検出における有用性は低い。
□腫瘍マーカー:CEA,CA15-3が代表的であるが,再発も含めた乳癌診断における十分なエビデンスは存在しない。
□細胞診検査:確定診断となりうるが,偽陽性,偽陰性の可能性がある。検体適正の場合「正常あるいは良性,鑑別困難,悪性の疑い,悪性」に分類される。パジェット病では乳頭擦過細胞診でパジェット細胞が観察される。
□組織診検査:針生検による組織採取は乳腺疾患における最も標準的な確定診断法である。がんの場合は,組織型のみならず,ホルモンレセプターやHER2などの生物学的特徴も確認できる。
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