□乳腺線維腺腫は腺上皮成分と線維性成分の両者を含む良性の充実性腫瘤である。
□15~35歳の女性に多く認められ,閉経後は退縮・消失するのが一般的であり,約20%において片側および両側乳房に多発性に認められる1)。
□乳癌や葉状腫瘍との鑑別が重要である。
□無痛性の辺縁明瞭な腫瘤として触知されることが多く,可動性は良好である。大きな腫瘤では皮膚を圧排することで乳房の変形を伴うことがあり,下着や洋服の接触により痛みを自覚することもある。
□妊娠時や,更年期障害に対するホルモン補充療法により増大することがあり,発生や増大にエストロゲンの関与が示唆されているが,詳細な病因は不明である。
□典型例では,周囲乳腺組織を圧排性に発育する腫瘤像であり,前方境界線は保たれている。形態は縦横比が小さい横長の楕円形が多いが,分葉状の形態を呈することも少なくない。
□腫瘤内部が粘液浮腫状の線維腺腫では,内部エコーは均質な低エコーとなり,後方エコーが増強する。一方で,腫瘤の内部に間質の硝子化による高エコーが生じ,後方エコーが減衰する症例も認められる。
□非典型例では乳癌との鑑別が重要であり,前方境界線の断裂・縦横比など浸潤所見の有無と,ドプラによる血流の評価,エラストグラフィーによる歪みの評価などを通じて,総合的に診断を行うことが必要となる。
□辺縁が明瞭な円形・楕円形・分葉状の形態を呈することが多く,乳腺組織と等濃度で内部均質な腫瘤影である。内部が硝子化した症例では,ポップコーン状の粗大な石灰化像を呈することが多い。
□画像上乳癌との鑑別が困難である症例や短期間での急速増大例で,葉状腫瘍との鑑別が必要となる場合は,針生検による組織診を行い確定診断を試みることを考慮する。
□閉経後女性において増大する線維腺腫は稀であるため,組織診を考慮すべきである。
□穿刺吸引細胞診のみでは,乳癌との鑑別は可能であるが,葉状腫瘍との鑑別は困難である。
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