□早発卵巣機能不全(premature ovarian failure:POF):40歳以下で4~6カ月以上継続して卵巣性無月経となったものである。遺伝子異常・染色体異常などの先天的な疾患のほか,自己抗体(抗21ヒドロキシラーゼ抗体,抗卵巣抗体,Jo-1抗体,抗核抗体)や,卵巣のホルモン産生腫瘍・放射線照射・抗癌剤投与・卵巣手術後など,様々な原因がある。35歳女性の0.25%,40歳女性の1%にみられる。
□早発閉経(premature menopause):POFのうち,卵巣機能の低下が不可逆的で排卵や妊娠が望めないものが早発閉経である。加齢に伴う卵胞の減少・枯渇が標準より早く進行した病態ととらえることができる。
□premature ovarian insufficiency(POI):POFと同義として用いられる場合と,POFから早発閉経を除いたもの,すなわち卵巣機能が回復する可能性を有するものを指す場合とがある。
□自然発症のPOFには,卵巣機能低下が急速に進行して突然無月経となる例と年単位の不規則月経を経て無月経となる例とがある。
□散発的に卵胞の発育や排卵が起こることがある。不規則月経を経て発症する例も少なくない。不規則月経の時期にホルモン療法が開始された場合には,ホルモン療法中止後に初めて無月経に気づく。
□このような症例では,急性発症の卵巣機能喪失や薬物治療の悪影響と誤解されることがある。産後から避妊用ピルを継続していた場合に,ピル中止後に突然エストロゲン欠乏症状が発症して患者を混乱させることがある。
□ホットフラッシュや発作性発汗を含む自律神経症状と腟乾燥感を訴えることが多い。
□POFの初期にはこれらの症状を欠くことも多く,エストロゲン欠乏症がなくてもPOFは否定できない。逆に発症の初期(不規則月経の時期)には,無月経が長く続いたときにのみ一過性にホットフラッシュが出現する。
・子宮の萎縮
・内膜の菲薄化
・胞状卵胞(AF)の消失
□これらの超音波所見に加えて,FSH高値があれば診断は確定できる。
□本症の診断にあたっては,まず妊娠を否定しておく必要がある。妊娠反応を用いることもできるが,経腟超音波検査による観察が適している。
□FSHの測定は,ホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)中止から2週間目以降に実施する。
□抗ミュラー管ホルモン(anti-Müllerian hormone:AMH)は卵巣予備能を反映するとされるが,測定感度以下であっても自然排卵する症例があり,本症の診断には適さない(保険適用外)。
□染色体異常が原因である症例の多くは,35歳以前に発症する。35歳以前の発症であれば染色体異常(ターナー症候群,特にXO核型のモザイク)の検索を行うが,それ以降では染色体検査の意義は低い。染色体核型正常例では,卵巣に早期黄体化を示す卵胞が観察されることが多い。卵巣組織の生検が必要となる症例は少ない。
・発症が40歳以下
・続発性無月経(4~6カ月以上の持続)
・FSHの上昇(>40〔または20〕IU/L)とエストロゲンの低下(≦10〔または20〕pg/mL)
□血液検査は,タイミングを変えて2回測定するのがよい。
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