□妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension:PIH)とは,妊娠20週以降,分娩12週まで高血圧がみられる場合,または高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで,かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症でないものを言う。
□病型は妊娠高血圧腎症,妊娠高血圧,加重型妊娠高血圧腎症,子癇の4つにわけられる。また,妊娠32週未満に発症するものを早発型,妊娠32週以降に発症するものを遅発型と言う。
□妊娠高血圧症候群の原因の詳細はいまだ不明であるが,現在は以下の発症メカニズム(two-stage disorder theory)で説明されている。すなわち,受精卵の免疫学的な許容がうまくいかないために,母体のらせん動脈のremodeling不全が起こり,その結果,絨毛間腔の酸素分圧が上昇しないため,抗血管新生因子(sFlt-1, sEng)が絨毛細胞から産生される。
□抗血管新生因子は胎盤通過性があるため,胎児胎盤循環系のみならず母体循環系にも移行して,血管内皮障害,さらには循環不全を惹起し,その結果,胎児では胎児機能不全や胎児発育遅延などが,母体では高血圧や蛋白尿,さらに臓器障害等が発症すると考えられている(図)1)。
□高血圧:収縮期血圧140mmHg and/or 拡張期血圧90mmHg以上。
□蛋白尿:試験紙法では,蛋白尿1+が連続2回以上,蛋白尿2+以上は検出された場合を,尿中蛋白/クレアチニン比は0.27g/gCr以上の場合を蛋白陽性とする。
□臓器障害:肝機能障害,腎機能障害など。
□胎児機能不全:NSTでnon-reassuring fetal status,臍帯動脈RI(resistance index)の高値,羊水量の減少,など。
□子宮内胎児発育遅延。
□血液濃縮:Ht値の上昇,など。
□肝機能の悪化:血清AST値・ALT値・LDH値の上昇,特にHELLP症候群で上昇,など。
□腎機能の悪化:血清尿酸値・BUN値・クレアチニン値の上昇,クレアチニンクリアランス(CCr)値の低下,尿中NAG値・β2-ミクログロブリン値の上昇,など。
□凝固亢進:D-ダイマー値・TAT値の上昇,血小板数・AT-Ⅲの減少,など。
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