□前置胎盤とは,胎盤の一部または大部分が子宮下部(子宮峡・下節)に付着し,組織学的内子宮口を覆うか,胎盤の辺縁がそれにかかる状態を言う。
□前置胎盤は妊娠の0.3~0.5%に合併し,経産婦,子宮手術(帝王切開など)の既往,前置胎盤の既往,多産,高齢,多胎,喫煙などが発症リスク因子である。
□警告出血や分娩時の大量出血が生じやすく,典型的なハイリスク妊娠と言える。
□低置胎盤とは,胎盤が子宮下部に付着しているが,組織学的内子宮口に及ばないものを言う。前置胎盤と同様に分娩時の出血に注意を要する。
□前置胎盤では,妊娠中,特に後期に警告出血と呼ばれる無痛性性器出血が半数以上の妊婦にみられる。これは妊娠の進行により胎盤付着部位(主に子宮下節)の床脱落膜が伸展し胎盤が部分的に剥離することにより生じるとされる。
□妊婦健診時の経腟超音波検査により,妊娠中期(胎盤が完成する妊娠16~20週以降)に前置胎盤疑いと診断し,妊娠31週末までに前置胎盤の診断を行う1)。
□前置胎盤は,胎盤が組織学的内子宮口にかかる程度により,全,部分(一部),辺縁の3種類に分類される。
□本来は子宮口が開大した時点で,全,部分(一部),辺縁,と診断される。しかし,現在は内子宮口が閉鎖しているうちに暫定的に定義(診断)されることが一般的である。
□組織学的内子宮口(頸管腺領域の上端)を同定し,組織学的内子宮口から胎盤辺縁までの距離が2cm以上の場合が全前置胎盤,2cm未満が部分前置胎盤,ほぼ0cmが辺縁前置胎盤と暫定的に定義される。
□前置胎盤の種類のみで管理指針が大きく変わることはない。胎盤付着が前壁優位か,後壁優位か,癒着胎盤の可能性はないか,といった事項のほうがより重要な情報である。
□妊娠中期以降の子宮下節の開大・伸展に伴い,あたかも胎盤の位置が頭側(子宮底部側)に移動するように見える(胎盤移動:placental migration)。
□妊娠中期以降は定期的に経腟超音波検査を行い,真の前置胎盤であるか(胎盤移動がないか)を確認する(図)。妊娠週数が進むほど超音波検査で前置胎盤と診断される割合は低くなる(妊娠中期約5%,妊娠末期約0.5%)。
□癒着胎盤の可能性を画像診断(超音波断層法・カラードプラ法やMRI検査)により評価する(図,表)2)。特に胎盤が既往帝王切開創を覆っている場合には,癒着胎盤の合併に注意する。
□低置胎盤の診断は,経腟超音波検査で組織学的内子宮口と最も近い胎盤辺縁との距離が2cm以内の状態を目安とする。胎盤移動により,この距離は長くなることがあるので臨床診断は直近の所見をもって行う。
□低置胎盤では,カラードプラ法を用い,内子宮口周囲において前置血管の有無を検索する。
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