編著: | 國松淳和(国立国際医療研究センター病院 総合診療科) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 164頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2018年02月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-6654-7 |
付録: | - |
第1章 総論─“かぜ”の次を考える
1 まず,よくある“かぜ”を正しく診ることから始めよう
2 かぜ診療における血液検査の閾値について考える
3 NCGM-GIM方式─血液検査結果を使っての絞り込み
4 「発熱+皮疹」の考え方
第2章 怒涛の各論構築─ウイルス感染症とその鑑別
A ウイルス感染症
1 EBウイルス
2 サイトメガロウイルス
3 ヒト免疫不全ウイルス
4 B型肝炎ウイルス
5 パルボウイルスB19
6 風疹ウイルス
7 麻疹ウイルス
8 デングウイルス
B 薬疹
1 薬疹のoverviewとウイルス性発疹症との鑑別について
2 典型薬疹
3 重症薬疹・特殊型薬疹
C ウイルス感染症ではないが鑑別対象となるもの
1 菊池病
2 全身性エリテマトーデス
3 ツツガムシ病
第3章 Caseで学ぶ発熱と「プラスα」の鑑別診断Basic─ここまでのおさらいと臨床応用
1 Case 1 45歳,男性─発熱+肝機能障害(サイトメガロウイルス初感染に伴う伝染性単核球症様症候群)
2 Case 2 26歳,女性─発熱+白血球減少(菊池病:組織球性壊死性リンパ節炎)
3 Case 3 15歳,男性─発熱+血小板減少(デング熱)
4 Case 4 22歳,女性─発熱+リンパ節腫脹(EBV初感染に伴う伝染性単核球症)
5 Case 5 34歳,男性─発熱+皮疹(風疹)
6 Case 6 33歳,男性─発熱+関節痛〔成人パルボウイルスB19感染症(伝染性紅斑)〕
巻頭言
外来診察室は基本1:1であり「外来研修」というのは非常に難しい。当院当科の外来研修では, まず初期研修医がとにかく独りで初診患者にファーストタッチし,病歴聴取・身体診察まではこなしてもらう。そして,いったん患者を外の待ち合いに出し, 研修医もその場を中座し指導医にプレゼンしに戻り,見立てと検査プランを確認・討議するのである。その際,診察室のベッドサイドで,研修医の横で指導医が身体所見を取り直す,といった光景は当科の外来では非常に少ない。時間がないからだ。
このような外来診療・外来研修風景になってしまう背景には,時間の問題のほかに,新宿という立地の問題があると思う。「さっさと薬が欲しい」「よく体を診察してもらいに来た」という患者よりも,「検査をしてほしい」「病名や症状の原因を突き止めてほしい」といった具合の患者が多い。すると,血液検査や画像検査などを駆使し,診断を詰め切ることが日々の業務になっていく。当科が“ベッドサイド”研修というより,「検査値の読み」「診断までの討議」を重視することになるのは,そうした背景があるからだと思う。
指導医と研修医がよく話し合い, 不器用ながら多少広範囲に検査をオーダーしてでも診断をつけようとして進み, 適宜議論を繰り返していくというこのスタイルでずっと診療を継続してきた,我々のかいた汗の結晶が本書である。私のほかに執筆の労を執ってくれたのは,当科の研修プログラムの卒業生である3名で,私と一緒にそうした診療を日々行い,“脳内の共有”を一定期間図ってくれた医師たちである。そのためか,本書を通読しても,この本が分担執筆であることをさほど感じさせない。
本書は「マニュアル本」ではないため,通常は外来診察室の本棚に置かれない体ではあるが,もし読んで下さった先生方が「これは置いておこう」という気になったのなら,編著者としての企みは成功したことになる。
国立国際医療研究センター病院 総合診療科 國松淳和