著: | 坂本 壮(地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院救急救命科医長) |
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著: | 安藤裕貴(一宮西病院総合救急部救急科部長) |
判型: | B5判 |
頁数: | 166頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2019年04月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-6661-5 |
付録: | 無料の電子版(HTML版)が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
対談「意識障害」(坂本 壮×安藤裕貴)
第1章 本誌の使い方
第2章 意識障害
第3章 意識消失
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巻頭言
「俺の敵は だいたい俺です」(『宇宙兄弟』11巻 ♯107. 本気の失敗 より Ⓒ小山宙哉/講談社)
救急医として多くの患者を診ていると,何となくこの患者は重症で迅速に対応したほうがよいという直感が働くものです。頻呼吸や冷や汗などは代表的な重症のサインですが,「何となくおかしい」というのも大切です。たとえば,麻痺を認めるものの血圧は高くない,血圧は低めだが頻脈を認めない,これらはそれぞれ脳卒中やショックを想起しながらも,そこに潜む鑑別すべき疾患を意識しなければならないバイタルサインの変化です。そして「意識障害」,これが何といっても「何となくおかしい」の代表です。意識障害を認めるのだから「普段と異なりおかしい」というのはあたりまえではありますが,意外とこの「何となくおかしい」を根拠のない原因と結びつけがちです。高齢だから,発熱を認めるから,認知症だからなど,意識障害を軽視して後悔した経験は誰もがあるのではないでしょうか。
肺炎の重症度スコア,敗血症を拾いあげるためのqSOFA,院内急変を予測する多くのツールに含まれているのが呼吸数,そして意識の評価です。本誌でも呼吸数の重要性は述べますが,そもそも目の前の患者が「何となくおかしい」と認識できなければ適切な対応は困難です。その最も簡単な方法,それが意識障害の評価でしょう。「普段とわずかでも異なる」というのをきちんと「意識障害」と認識し対応できれば早期介入,適切なマネジメントができるでしょう。
私も救急医になりたての頃は後悔したことが多々ありますが,「何となくおかしい」を軽視せず対応するようになってから,その数は一気に減りました。対応は簡単ではありませんが,自身の意識の仕方でだいぶ精度は変わるでしょう。
冒頭の言葉は,私が大好きな『宇宙兄弟』という漫画の主人公 南波六太(ムッタ)が上司 ビンスに「君にとっての敵は誰ですか?」と質問された際に答えた台詞です。敵(診断を困難にする因子)は周囲の人物(患者・家族)ではなく自分自身なのです。
意識障害の原因は多岐にわたり,その場で診断がつかないことも少なくありません。しかし,やるべきことをきちんとやりさえすれば何ら問題はないのです。ムッタの弟 日々人もこう言っています。「世の中には絶対はないかもな。でもダイジョウブ。俺ん中にあるから」(『宇宙兄弟』 7巻 ♯6. ロケットロード よりⒸ小山宙哉/講談社)
本誌では意識障害(意識消失)の頻度の高い原因ごとに,そのアプローチ,現場でやるべきことをまとめました。みなさんの意識障害の対応が「何となくわからない」から「わかる」となれば幸いです。
さいごに,いつも支えてくれる家族へ,“ありがとう”。
2019 年4 月 地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院救急救命科医長 坂本 壮