著: | 井口 傑 |
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判型: | A5判 |
頁数: | 252頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2020年09月14日 |
ISBN: | 978-4-7849-4920-5 |
版数: | 第1 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
診療科: | 整形外科 |
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1章:足と靴
1. なぜ,人間は靴を履くのか?
2. 靴の構造
3. 足の構造と解剖
4. 足にかかる力,靴にかかる力
5. 歩く/走る
6. 靴で病気になる?
2章:靴と足を診る
1. 診察の前に
2. 足と靴の診察
3. 保険で診る
4. 足底板,インソール,中敷き
3章:靴でなる疾患,靴で治る疾患とは?
4章:様々な「靴でなる疾患,治る疾患」
1. 足の疾患
①外反母趾/②槌趾/③内反小趾/④爪下血腫(黒爪)/⑤母趾種子骨障害/⑥陥入爪/⑦強直母趾/⑧モートン病/⑨有痛性外脛骨/⑩前足根管症候群/⑪マーチ(行軍)骨折/⑫中足骨疲労骨折/⑬ジョーンズ骨折/⑭リスフラン靱帯損傷/⑮足根骨変形性関節症/⑯足根隆起/⑰内側足底神経エントラップメント(ジョガーの足)/⑱足関節外側靱帯損傷/⑲腓骨筋腱鞘炎/腓骨神経エントラップメント/⑳アキレス腱周囲炎(付着部炎)/㉑ハーグランド変形/バンプ・パンプ/㉒靴擦れ/㉓踵部脂肪褥炎
2. 靴でなる運動器の疾患(足以外)
①シン・スプリント/②変形性膝関節症/③O脚(内反膝),X脚(外反膝)/④鵞足炎/⑤膝靱帯損傷/⑥オスグッド・シュラッター氏病/⑦股関節痛/⑧変形性脊椎症/⑨転倒,骨折
3. 靴でなる体と心の疾患
①ロコモティブ・シンドローム/②サルコペニア/③フレイル/④骨粗鬆症/⑤メタボリッ・クシンドローム(糖尿病,脂質異常症,高血圧,動脈硬化)/⑥引きこもり,うつ状態,認知症/⑦糖尿病足
5章:エッセイ
1.人間とは
2.靴でなる病気の筆頭―外反母趾
コラム
1.下腿三頭筋は一関節筋か二関節筋か
2.アキレス腱のもう1つの働き
3.腓骨筋腱と外反母趾
4.趾屈筋も足関節を屈曲する
5.意外に効率の良い二足歩行
6.足底圧計
7.刺激の変化
8.最高の足底圧計
9.ロッカー・ボトム
10.転ぶハイヒール
11.種子骨とトンネル
12.クッション性底衝き
13.重い靴,軽い靴
14.浮き趾
私が医者になって半世紀が経った。初めて医者として働いたのは,戦後の雰囲気を色濃く残した,東京の下町の病院だった。近くには,まだ臭いの漂う隅田川が流れ,川沿いには日本製靴(現リーガル)やハルタ製靴の製靴工場があり,土手の周辺には多くの靴職人が住み,働いていた。そんな中での医者の仕事は,朝から晩まで傷の縫合で,革漉すき職人がお得意様だった。まだよき時代で,若造の医者にも,靴工場の労災担当から,盆暮れにはお礼の靴が届いたし,靴職人の爺さんには,手を縫ってもらったお礼にと注文で靴を縫ってもらった。
そんな医者が,いつの間にか大学に戻り,足を専門に選んで,定年を迎えた。長年持ったメスを傍らに置いたとき,気になったのは靴のことである。「足に合った靴を履きなさい」とは, 患者に言い続けてきた言葉だが,「どこに行って買うのですか?」の質問の答に窮したこともしばしばだった。最も困ったのは,長年連れ添った女房に「足の医者なら, 痛くない靴の1つも見つけられないの!」と詰問されたことである。
中学時代の友人に誘われたのをよいことに,大学を退職したのをきっかけにして,靴メーカーの顧問に潜り込んだ。それから10年近く,「足に合う靴, 足の痛くならない靴」を目指して試行錯誤を続け,外反母趾の患者が痛くなく履ける靴から,冠婚葬祭に履いて行ける痛くないパンプスまで,売れもしない靴を試作してきた。その一方で,すでに亡くなられた長崎大学の鈴木良平教授や,城南病院の石塚忠雄院長の薫陶を受けて,日本靴医学会の理事長まで務めさせていただいた。いつかは,患者に「足が痛いなら,この靴を履きなさい」と言える靴を開発して,先達の恩に報いたいと思っているが,その前に靴と命がすり切れそうである。
そうこうしている間に,昔の同級生から,「糖尿病の患者によい靴はないか?」,「骨粗鬆症には踵の硬い靴がよいって本当か?」などと, 靴に関する質問をよく受けるようになった。“靴医学”と称して活動してきた身としては, 単に足と靴の関係だけでなく, 数百万年かけて人類が初めて成し遂げた“常時直立二足歩行”という偉業と,この数千年間に急速に普及した靴という2つの観点から,現代社会における靴と疾患の関係を『靴でかかる疾患,靴で治る疾患』と題して考えてみたい。
2020年8月
井口 傑
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。