編著: | 水野 篤(聖路加国際病院循環器内科/ペンシルバニア大学ナッジユニット) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 288頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2020年12月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5797-2 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆「SPECTってどのくらい信頼できるの?」「房室ブロックって結局どうするの?」……ガイドラインを読むだけでは解決できない問題は日々の診療に多々あります。本書は、循環器内科医のそんな「悩みどころに」お答えします!
◆「検査」「手技」「疾患」それぞれの悩みどころにどう対応するか、エキスパートたちが具体的な症例をもとに解説。さらにそれを踏まえて編者水野先生が「循環器内科で決め手となる用語(パワーワード)」「そうはいっても知っておくべき基本的なガイドライン情報」を挙げています。
◆これらから、文章にはなかなか示されていない常識(現場ドクターの暗黙知)を身につけ、一歩進んだ循環器領域を実践しましょう!
1章 悩みどころの……基本検査!
1 誰だ,「心電図は簡単」って言ったのは!?
2 ガイドラインで推されてるKerley’s B lineって難しくない?
3 心エコーでasynergyってホント? thickeningって何じゃ?
4 今って運動負荷試験はどうなの? 何歳までできるのか?
5 SPECTってどのくらい信頼できるの?
6 今どきドブタミン負荷心エコー? いつ,どう使うの?
7 とりあえず胸痛があれば冠動脈CTってダメ?
8 心機能低下精査で遅延造影MRIをやったけど,よくわからないのは自分だけ?
9 感染性心内膜炎とかデバイス感染ってやっぱりPET?
2章 悩みどころの……基本手技!
1 PCI適用の判断はFFRだけでもう十分じゃないか─安静時圧指標の登場で変わってきたこと
2 心筋生検ってリスク対効果が悪くないか?
3 心膜穿刺は前胸部? 心窩部? 10mmってやっぱりリスクあるよね……
4 カテ後の止血って結局どう押さえるの?
3章 悩みどころの……疾患!
1 不整脈─ 結局,wide QRS complex tachycardiaってどうするの?
2 徐脈─ 房室ブロックって結局どうするの?
3 虚血性心疾患─ LADのjust proximalは結局PCIじゃだめ?
4 心不全─ 結局,高齢者のHFpEFにβ遮断薬とRAA系阻害薬は投与する?
5 弁膜症─ 無症候性の大動脈弁狭窄症に治療適応はあるのか?
6 心筋症─ よくわからない無症状だけど,心筋が明らかにおかしい場合は?
7 心筋炎─ 急性心筋炎ってどのタイミングで人工補助デバイスを入れればよいの?
8 心膜炎─ 収縮性心膜炎と拘束型心筋症は判断が難しすぎる……どうすれば?
9 動脈・静脈疾患─ 術前で見つかったヒラメ筋の血栓って結局どうしてる?
10 高血圧・低血圧─ 二次性高血圧のスクリーニングは誰にどこまでやる? 全部を全員に?
11 心臓腫瘍─ 心臓内腫瘍において,生検するべきかどうなのか? 他の検査との関係
12 先天性疾患─ 心房中隔欠損症って聴診でわかる? エコーで確実? 結構難しくないか?
本書を出すにあたり,一番課題があったのは何といってもタイトルでした。
出版社の方々の意向としては明確で2つ。
・ガイドラインを読むだけでは解決できない問題を取り扱う
・症例を織り込む
実際に自分がガイドラインを読んでいてもモヤモヤしていたり,難しいなぁと思う問題を書き出し,信頼する先生方にご執筆をお願いするという形となりました。本当にこのような各界を代表とする先生方にサポートしていただき感謝しかありません。
最初は何を血迷ったか「しくじらない医師の症例検討集!」という仮題だったため,執筆者の先生方からしたら,はっきり言ってなんじゃ! ということを思われた中でご執筆くださったのではないかと思います。表現の奥にある意図を本当に上手くくみ取ってくださりました。
各項目を拝読する中で,この書籍のひとつの大きな意義としては,ちょうどこれからスペシャリストとして成長する読者の先生方に求められるような「暗黙知」を提供することだと思いました。どのような業界にも文章になかなか示されていない常識(自分はよくこれを「暗黙知」と言っています)を理解してもらう必要があって,ちょうど本書はそれをうまーくカバーしているのではないかと思ったのです。結果,循環器を志す研修医から,循環器フェロー2~3年目ぐらいのモチベーションが高い先生が読んでも十分に読み応えがある内容となったと思います。タイトルはもっと抑えた形,そして意義も伝わりやすいように「エキスパートが答える循環器領域25の疑問」となりました。
本文の内容は,それぞれの領域において,誰から見ても最高級のエキスパートの先生が書いているので,国内最高レベルです。それぞれの先生の紐解き方にもいろいろあるので,ここも楽しめるところではないかと思います。末永先生のような各種Clinical trialを提示するパターンや,村井先生のひとつ踏み込んだPhysiologyへのこだわり。同じ課題を提示されたとしても,循環器内科医としての解決法は多種多様であり,きっと読者の先生方にも新たな視点を提供してくれるものと思います。このようなスタイルの違いも本書の魅力のひとつとなるでしょう。
そして,「そんな暗黙知なんて言われてもピンとこない!」という先生方のために,勝手ながら編者として,各項目の最後に「水野の部屋」としてそれぞれの項目を少し補完するガイドラインと,そこで扱っていた専門用語をピックアップしました(本書内では「パワーワード」と呼んでいます)。ここを読むだけでもある程度循環器の概要がわかるようになっていると思います。
難しいと感じた場合は,「何が難しいのか」ということを感じて下さい。論理展開なのか,用語の意味の問題なのか。論理展開は暗黙知につながり,用語の意味自体はパワーワードとして定義を確認して覚えていく最初の一歩です。ある程度はガイドラインでカバーできると思います。検索窓にパワーワードを入れ,周辺を読む。こういう受験英語・英語辞書で実践していたような勉強方法がきっと役立つのではないかと思います。
2020年11月
聖路加国際病院循環器内科
水野 篤
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。