編: | 吉原史樹(国立研究開発法人国立循環器病研究センター腎臓・高血圧内科部長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 304頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2022年08月15日 |
ISBN: | 978-4-7849-6361-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
1章 心腎連関症候群の定義と分類
1 CRS type 1:ADHF → AKI
2 CRS type 2:CHF →CKD
3 CRS type 3:AKI → ADHF
4 CRS type 4:CKD → CHF
5 CRS type 5:systemic disease
2章 心腎連関症候群 Q and A
CRS type 1:ADHF → AKI
Q1 AKIの診断方法の歴史を教えて下さい
Q2 AKIの診断に有用なバイオマーカーについて教えて下さい
Q3 利尿薬の使い方とAKIに関する特徴や注意点を教えて下さい
Q4 CRSのリスク因子について教えて下さい
Q5 利尿薬反応性についてCRSへの関与を含めて教えて下さい
Q6 血管拡張薬・hANPと腎機能悪化(WRF)に関する特徴や注意点を教えて下さい
Q7 カテコラミン(ドパミン, ドブタミン)と腎機能悪化(WRF)に関する特徴や注意点を教えて下さい
Q8 AKIを診断した場合の対処方法を教えて下さい
Q9 腎代替療法の選択基準や方法について教えて下さい
CRS type 2:CHF → CKD
Q10 HFpEFとHFrEFで生じるCKDの機序や頻度に違いがありますか?
Q11 水分制限やNa 制限の評価方法や効果について教えて下さい
Q12 利尿薬の種類でCKD頻度や長期予後に差はありますか?
Q13 pseudo-WRFについて教えて下さい
Q14 リハビリは腎機能保護に役立つのでしょうか?
Q15 心移植の適応は腎機能が考慮されるそうですが,基準を教えて下さい。心移植後の腎機能の注意点は何がありますか?
Q16 補助人工心臓による治療は腎保護に役立つのでしょうか?
Q17 投与に際し注意すべき心不全治療薬について教えて下さい
3章 慢性腎臓病と心不全
心不全治療のエビデンスにおけるCKD やESRDの意義
Q18 薬物治療のエビデンスにおけるCKDやESRDの関与について教えて下さい─ ACE阻害薬/ARB─
Q19 慢性心不全にCKDを合併した患者はβ遮断薬を積極的に投与すべきですか?
Q20 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬治療のエビデンスにおけるCKDやESKDの関与について教えて下さい─ ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬/抗アルドステロン薬─
Q21 薬物治療のエビデンスにおけるCKDやESRDの関与について教えて下さい─ バゾプレッシンV2受容体拮抗薬─
Q22 薬物療法のエビデンスにおけるCKDやESRDの関与について教えて下さい─SGLT2阻害薬─
Q23 薬物療法のエビデンスにおけるCKDやESRDの関与について教えて下さい─ARNI─
Q24 非薬物療法のエビデンスにおけるCKDやESRDの関与について教えて下さい
腎不全の進行と心不全
Q25 CKDやESKD患者のCaとP代謝と心血管疾患の関係について教えて下さい
Q26 CKDやESRD患者の高リン血症治療と心血管疾患の関係および注意点について教えて下さい
Q27 CKDやESRD患者のADMAおよびAGEsと心血管疾患の関係やその対策について教えて下さい
Q28 CKDおよび心不全治療における高カリウム血症の意義とその対策について教えて下さい
Q29 心不全合併があっても腹膜透析を導入できますか? 腹膜透析患者に造影検査が必要な場合の対策を教えて下さい
Q30 CKD患者の心血管イベント抑制と腎保護効果を期待する高血圧の管理方法を教えて下さい
外来・在宅診療および緩和ケア
Q31 外来診療や在宅診療における心腎連関症候群の位置付けや介入方法について教えて下さい
Q32 外来診療や在宅診療における多職種介入の意義について教えて下さい
Q33 心腎連関症候群における緩和ケアの考え方や実践について教えて下さい
4章 トピックス
Q34 腎デナベーションが高血圧治療で注目されていますが,心腎連関症候群の治療への応用の展望について教えて下さい
Q35 SGLT1/2阻害薬(dual inhibitor)とSGLT2阻害薬の違いを教えて下さい
Q36 CKD患者のFGF23およびKlothoと心血管疾患の関係について教えて下さい
Q37 新型コロナウイルス感染症と心腎連関症候群との関連性はどのように考えられているのでしょうか?
Q38 心移植後のCKDの原因としてのウイルス感染症について教えて下さい
Q39 HIF-PH阻害薬の効果について教えて下さい
Q40 心腎連関症候群(CRS)の分子生物学的機序はなんですか?
心腎連関症候群は2000年代に入り,救急医,循環器医,腎臓医によって注目され,症例報告から総説に至るまで,数多く発表されて参りました。その甲斐あって,非専門医の先生方にも広く認知されることとなりましたが,病態生理の説明は一筋縄では行かず,治療には問題が山積していると言わざるを得ません。
心不全治療も腎臓病治療も各々にガイドラインが刊行され,数年毎にアップデートされておりますが,高度腎障害のある心不全患者,低心機能の腎臓病患者の治療は,ガイドラインどおりに進められないことは周知の通りです。本企画では,各テーマ解説をご担当頂いた先生方へ,なぜ問題が山積し,なぜガイドラインどおりに進められないのかという側面にも注目しつつご執筆頂き,将来的展望を含めて読者の皆様と情報共有することを目的と致しました。
第1章は,心腎連関症候群を病型に分けて,主に病態生理に関する現在の考え方と今後の展望について解説して頂きました。
第2章は,臨床現場で遭遇することの多い心腎連関症候群の1型と2型を中心に,急性腎障害の定義の変遷,尿中バイオマーカーの知見の整理,リスク因子,心臓リハビリの効果,利尿薬を含めた薬物治療,腎代替療法の選択基準,補助循環装置や心移植の適応,心機能の低下の有無による病態機序の違いについて,各々の現状と今後の展望を解説して頂きました。
第3章は,ACE阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬,β遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬, バゾプレッシンV2受容体拮抗薬,Sodium–glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬,アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬などの薬物治療だけでなく,植込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)の非薬物治療の意義,カルシウム・リン代謝,血中リン値やカリウム値のコントロール,Asymmetric dimethylarginine(ADMA)および(Advanced Glycation End-products)AGE対策,血圧コントロールについて最新の情報を記載頂きました。さらに,心腎連関症候群の治療に際し,腹膜透析のもたらしうる恩恵,外来診療や在宅診療と多職種介入の意義,緩和ケアの考え方と実践について,本書において情報を発信し皆様と共有できることは大変有意義であると考えます。
第4章は,トピックスとして編者が興味ある7項目(Q34~Q40)について各々の領域で専門的に活動されている先生方に最新の知見を中心にご紹介頂くことができました。病態生理や臨床上の進展への展望が集積する非常に喜ばしい内容となっております。
本書の企画段階で書籍テーマとして「なぜ病態理解は難しく,対策は困難なのか?未来はどのように切り開くのか?」を掲げた際,少々過剰な表現かと思っておりましたが,ご執筆頂いた先生方の原稿を読み進めるうちに,現時点でのコンセンサスと問題点にとどまらず,将来的展望を大いに語って頂いていることが理解でき感動致しました。大変ご多忙のなかご執筆頂いた先生方へ深く敬意と感謝を申し上げるとともに,読者の方々へ自信をもって本書をご一読頂くようお願いする次第であります。
最後に,企画から出版までの間,様々な問題について粘り強くご対応頂いた日本医事新報社の村上由佳氏にあつく御礼を申し上げます。
国立循環器病研究センター 腎臓・高血圧内科
吉原史樹
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。