著: | 星野祐二(国際医療福祉大学 教授/福岡山王病院 血管外科 部長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 144頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2023年03月06日 |
ISBN: | 978-4-7849-6845-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
第Ⅰ章 病態の理解
1. はじめに ―慢性の深部静脈不全とは
2. 静脈血栓後症候群(血栓後症候群,静脈血栓後遺症)
Column1. 急性期深部静脈血栓症の治療 open vein hypothesis
3. nonthrombotic iliac vein lesions(NIVL)(May-Thurner症候群)
4. 原発性深部静脈不全(PDVI)
第Ⅱ章 診察のポイントと検査の進め方
1. 問診および診察のポイント
2. 検査
第Ⅲ章 評価スケール
1. CEAP分類
Column2. 一次性下肢静脈瘤,二次性下肢静脈瘤
Column3. CEAP分類の改定“E”
2. VSSシステム
3. Villaltaスケール
第Ⅳ章 治療
1. 圧迫療法でどこまで良くなるか
Column4. 圧迫療法はPTSを予防できる?
2. 表在静脈手術,穿通枝手術
3. 腸骨静脈ステント留置術を含めた深部静脈のインターベンション
FOCUS1. ステント留置後の成績(動脈用ステントと静脈専用ステント)
FOCUS2. 鼠径靱帯以下の静脈ステント留置の是非(インフローの重要性とステント破損の危険性)
FOCUS3. 治療介入の指標,狭窄度50%以上でよいのか
FOCUS4. 理想的な穿刺部位は?
FOCUS5. ステント留置後の抗凝固療法,抗血小板療法
FOCUS6. 合併症
FOCUS7. 注意点(麻酔法,周術期の弾性ストッキング,フットポンプ)
第Ⅴ章 症例
1. 血栓後症候群 左総腸骨静脈~総大腿静脈閉塞症例
2. 血栓後症候群 左総腸骨静脈閉塞症例
3. 血栓後症候群 動静脈瘻合併症例
4. 血栓後症候群 左総腸骨静脈~外腸骨静脈閉塞ガイドワイヤー貫通困難例
5. 血栓後症候群 右外腸骨静脈狭窄症例
6. 血栓後症候群 左腸骨静脈閉塞によるC3症例
7. 血栓後症候群 ステント留置後翌日にステント急性閉塞“missed inflow”症例
8. NIVL症例 左総腸骨静脈高度狭窄
2023年,静脈ステント留置術が保険収載されます。これは,これまで下肢の慢性静脈不全に対し広く行われている,弾性ストッキングや弾性包帯を用いた圧迫療法,血管内焼灼術や塞栓術,ストリッピング術などといった表在静脈手術,SEPSなどといった不全穿通枝手術に加え,強力な治療オプションが1つ追加されることを意味します。この新たな治療オプションを,最大限有効に活用するためには,その適応がどういった病態の患者さんなのか,上記の既存治療法とどのように組み合わせて治療戦略をたてていくのがベストであるのかを知る必要があります。
これまで静脈ステント留置術は主に欧米を中心に行われてきておりますが,すでに良好な治療成績と安全性が報告されています。当初は動脈用のステントを静脈にオフラベルで使用して行われておりましたが,それでも非常に良い治療成績と安全性が報告され,その後,静脈専用のステントが開発され使用されてきても,その成績は動脈用のステントとほぼ同様の良好な治療成績と安全性が報告されてきております。本書では主に動脈用のステントを使用した治療経験を中心に記載されておりますが,病態の捉え方や治療方針の決め方,実際の静脈インターベンションを含め,静脈専用のステントとほぼ同様と考えて問題ないものと思われます。
本書の内容は2023年時点での最新のデータをふまえたものとなっておりますが,この静脈ステント自体が新しい治療法であり,昨今の血管内治療の急速な進歩より考えても毎年新たな情報がアップデートされてくるものと思われます。この新たな治療法を知るにあたり,本書が良い出発点となり,また静脈ステント留置術のみならず下肢の慢性静脈不全の診断・治療に携わる医療従事者にとって幅広く役立つものになると期待しています。
2023年2月
星野祐二