著: | 古橋正吉(東京医科歯科大学名誉教授) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 272頁 |
装丁: | 単色 |
発行日: | 2001年07月10日 |
ISBN: | 4-7849-4200-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
院内感染の予防とコントロールに応じた滅菌・消毒法の実際を2001年春までのデータを入れて解説しました。
高圧蒸気滅菌,乾熱滅菌をはじめ,化学消毒法,バイオクリーンルームについても詳細に記述しています。
週刊「日本医事新報」質疑応答欄に掲載された関連のあるQ & Aをピックアップし、日々の診療時の疑問にお答えしました。
内科・外科を問わず,院内感染の防止に役立つ1冊です。
第1章 病院内感染の予防とコントロール
1 注目される感染症と主な病原微生物
2 感染の伝播経路
3 感染危険度(リスク)と滅菌・消毒法
4 感染症に関する法律
5 滅菌・消毒を行う前の処理
第2章 滅菌・消毒法の適用と種類
1 医療用具・医薬品の特徴
2 滅菌法・消毒法の種類
3 滅菌・消毒の用語と定義
第3章 滅菌・消毒法の実際
1 高圧蒸気滅菌
2 乾熱(dry heat)滅菌
3 間欠法(fraction sterilization)
4 流通蒸気法(flowing steam disinfection)
5 高周波照射法
6 濾過除菌法(filtration)
7 煮沸消毒法
8 ガス滅菌法
9 新方式の低温下滅菌法
10 放射線滅菌
第4章 化学消毒法の実際
1 消毒薬の殺菌効力
2 消毒薬の種類
3 消毒薬の使用対象
4 常用消毒薬の種類と特徴
5 消毒薬使用時の注意
6 内視鏡の消毒と清浄管理
7 手指消毒と手術野消毒
8 手術室用の手洗い水
第5章 清浄空気環境と医学応用
1 バイオロジカルクリーンルームの歴史的経過
2 バイオロジカルクリーン技術の基本概念
3 バイオロジカルクリーン手術室(BCR)
第6章 Q&A
Q1 家庭用電子レンジによる滅菌の可否
Q2 火炎消毒法とその殺菌効果
Q3 紫外線小型消毒器の殺菌効果
Q4 綿布手術衣・覆い布等の再生処理時の感染防止法と問題点
Q5 ディスポ不織布製手術衣・覆い布の感染防止効果と経済性
Q6 注射器各部位の名称
Q7 注射器の洗浄法
Q8 注射器の再生使用と自家滅菌法
Q9 感染防止と使い捨て注射針
Q10 手術用ゴム手袋の滅菌後再生利用
Q11 ゴム手袋等の物理的強度と透過性
Q12 病院での滅菌・消毒後の有効期間について
Q13 滅菌有効期間決定のための無菌試験法
Q14 ディスポ医療用具の期限切れによる再滅菌
Q15 イソプロパノール等配合の外用消毒殺菌薬
Q16 エチルアルコールと粘膜の消毒
Q17 注射時の皮膚消毒と注意点
Q18 腸管出血性大腸菌感染症の流行と手指消毒の必要性
Q19 クロルヘキシジン(ヒビテン)の抗菌力
Q20 カンジダの耐熱性と耐薬剤性
Q21 緑膿菌で汚染された器具・病室等の処理法
Q22 手術室の消毒法
Q23 手術室の床材料について
Q24 医院での排水管詰まりへの対策
微生物を完全に死滅させる滅菌法には、加熱(高圧蒸気、乾熱)酸化エチレンガス、放射線照射、化学滅菌(殺芽胞)剤、精密濾過法などがある。一方、潜在する有害な微生物を殺したり、不活化する消毒法には、化学殺菌剤(消毒薬、防腐剤)による方法と物理的方法(煮沸、紫外線照射)などがある。
手術に用いる器械、材料の準備の大半は病院側の責任下に滅菌が実施されている。また治療、診断の目的で、血管、気道、泌尿生殖器などの粘膜に挿入、留置するカテーテル、チューブ類は滅菌済み・使い捨ての市販製品が利用されている。
最近、産業滅菌業界に対して、滅菌装置の運転と実施に当たっては、器材の滅菌後に汚染微生物の存在する可能性が確実に百万分の1(10‐6)またはそれ以下になるように慎重に計画立案し、常時モニタリングするというプロセスが要求されている。10‐6とは、無菌状態でない品物が百万個中1個以下を示している。仮に滅菌保証が10‐6ではなく10‐3の場合に、生残している微生物から感染が起こる可能性はどうなのか論議する余地があろう。
B型肝炎の場合、感染力のあるウイルス粒子が血液1mL中に1億?10億個も存在するとされている。これら汚染器材の滅菌処理業務や血液透析施設、手術室、病棟での針刺し事故、刃物による汚染事故などの発生対策は周知のことであるが、化学滅菌、殺菌法もまた医療に携わる方々にとって身近で重要な事柄である。
滅菌法と消毒法の選択は院内感染防止を目的として、有効性、安全性とともに、能率よく迅速に広い範囲の対象物件に適用できることが望ましい条件とされている。安全性を取り上げると、最近酸化エチレンガスの人体、環境への毒性の問題から、新しい滅菌法(過酸化水素低温プラズマ滅菌)の研究開発が促進され、より安全な滅菌技術として広く利用されるに至った。
21世紀に向かって技術革新はさらに加速されるであろう。
本書は、読者の日常に役立つよう最新の滅菌・消毒法の実際に重点を置き詳述した。消毒薬は手術手洗い、手術野皮膚、粘膜の消毒の他に器具の再生処理、室内環境の手段として不可欠の薬剤である。各種消毒法はもちろん、各種消毒薬について、わかりやすく、その特徴、適用などを掲げた。また、バイオロジカルクリーン手術室の運営などについても概説した。加えて、1990年から国際標準化機構(ISO)が設けた「ヘルスケア製品の滅菌」の国際規格作成を目的として開催されている国際会議の概要なども参考資料として添付した。さらに、巻末に滅菌・消毒法に関するQ & Aを新たに24項目にわたり掲載した。
本書が手術後感染、院内感染防止にいささかでも役立つものであれば、著者にとってこれにまさる喜びはない。
本書作成に当たり、東京医科歯科大学手術部でともに研究された方々の研究報告を参考とした。ここに各位に対し深甚の謝意を表する。また、業界でご活躍の方々からも、ご助言や資料提供をお願いした。あわせて御礼を申し上げる次第である。