編著: | 星野明弘(東京医科大学消化器・小児外科学分野 講師) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 238頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2024年08月08日 |
ISBN: | 978-4-7849-1351-0 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
・TAPP法,TEP法をはじめとする腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術における基本手術のすべてを集約しました。
・手術の流れや習得すべきポイントをわかりやすく丁寧にまとめています。また豊富な図と動画で理解がさらに深まります。
・若手消化器外科医や技術認定取得を目指す外科医にとって必携の1冊です。
私が若手外科医の時代にヘルニア手術を始めた当時,勤めていた施設ではダイレクトクーゲルがほとんどでした。しっかり勉強して手術に臨んだものの,解剖がよくわからず,言われた通りに手術をしていた記憶があります。このときに手術書を読んでも筋肉や膜構造などさっぱりわからないというのが本音で,ヘルニアに興味がまったくありませんでした。しかし,医師9年目でヘルニア治療に関する転機が訪れました。それは,日本ヘルニア学会の前身である日本ヘルニア研究会の第6回会長を務められた中嶋 昭先生(日産厚生会玉川病院 院長,当時)にご指導頂く機会でした。中嶋先生は,当時はLichtenstein法の名医でしたが,私が赴任する少し前から,今後は腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術(ラパヘル)がヘルニア手術の主体になると確信していらっしゃったようで,TAPP法を導入し始めておられました。当時を振り返ると,本当に先見の明があったと感心していますが,そのおかげで私はTAPP法を施設の導入初期から展開することができました。いざ始めてみると,腹腔鏡の基本手技やエッセンスが詰まった術式であり,ヘルニアの存在診断が確実であることや解剖の理解が容易であること,さらに当時高度な技術であった腹腔鏡手術に大変興味があったことから,この手術に魅了されてしまいました。そこからは「好きこそ物の上手なれ」であり,腹腔鏡手技ならびにラパヘルが急激に上達したように思います。
もう1つの転機は,日帰りクリニックとして開業した東京外科クリニックの大橋直樹先生と出会い,日帰り手術のお手伝いをさせて頂く機会でした。それまでは入院が当然と思っていたヘルニア手術でしたが,日帰り手術のお手伝いをしてみると,患者さんが術後1時間程度で帰宅されていく姿を拝見し,この手術は日帰りが基本であると実感し,日帰りを希望される患者さんの数が多いことからニーズも高いと感じました。また,関連病院から帰学した若手外科医の腹腔鏡技術をなんとか底上げできないかと考えていたときにも,大橋先生には教育の面でご協力頂き,日帰りクリニックと連携した手術指導プログラムを考案したところ,快く引き受けてくださり,そのおかげで日本内視鏡外科学会の技術認定医を毎年育成することができています。
このような人生経験からラパヘルの技術を身につけ指導できる実力が備わったことで,この度の書籍制作のお話を頂けたのだと思っており,お二人には大変感謝しています。
本書には,普段から指導している若手外科医に技術認定医を取得してもらうために必要なエッセンスを詰め込みました。豊富な動画,および習得すべきポイントとまとめでわかりやすく学ぶことができます。また,鉗子の使い方などの腹腔鏡手技の基本的事項から学べるようにしたところは他書にない本書の最大の特徴であり,若手外科医が本書を手に取って学習することで,腹腔鏡手術の基礎から学ぶことができ,さらにラパヘルの魅力を大いに感じ,興味を持って手術に臨んでもらえるのではないかと自負しています。ヘルニアは若手の登竜門の手術と言われていますが,解剖の理解や術式の要点などをしっかり学習していないと実際には難しい手術です。本書により,若手外科医だけでなく多くの消化器外科医にラパヘルを紐解いて頂き,実践で本当に役立つ参考書になれば編者の望外な喜びです。
最後に,本書の刊行にあたりご指導頂いた先輩方や執筆にご協力頂いた先生方に厚く御礼申し上げるとともに,編集にご尽力頂きました日本医事新報社の吉田理恵氏と関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
2024年7月
東京医科大学消化器・小児外科学分野 講師
星野明弘