著: | 桑島 巖(東京都老人医療センター副院長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 146頁 |
装丁: | 単色 |
発行日: | 2008年01月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5450-6 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
家庭用自動血圧計で測定し記録した患者さんの血圧日誌をどのように読み取り、それをもとにどのように降圧薬を選択し、降圧目標値を設定するか?さまざまな高血圧症例の血圧管理のコツを解説した週刊『日本医事新報』の大好評連載「家庭血圧管理術」が本になりました。高血圧患者のパーフェクトコントロールを目指す医師必携の1冊です!読んだその日から、すぐに診療の役に立ちます。
01 診察室では高血圧だが家庭では正常血圧
02 診察室血圧はかなり高いが家庭血圧もやや高め
03 血圧変動の大きい白衣高血圧
04 診察室血圧は正常だが家庭では高血圧となる症例
05 ARBとCa拮抗薬の併用でも降圧がみられない早朝高血圧
06 サージタイプの早朝高血圧
07 困った時の早朝高血圧抑制法-その1
08 困った時の早朝高血圧抑制法-その2
09 深夜勤務者における血圧変動
10 鼻出血を伴う治療抵抗性の仮面高血圧
11 糖尿病を合併した仮面高血圧
12 糖尿病を合併した持続性高血圧
13 軽度の耐糖能障害を合併する高血圧
14 心肥大を伴う高血圧
15 巨大陰性T波を伴う治療抵抗性高血圧
16 虚血性心疾患を合併した高血圧
17 脳卒中罹患後の高血圧
18 Ca拮抗薬がほてり感などの副作用で使えない高血圧例
19 脈圧が大きい高血圧の病態と対応
20 ストレスと高血圧-その1
21 ストレスと高血圧-その2
22 ストレスと高血圧-その3 職場高血圧
23 血圧の季節変動
24 後期高齢者の高血圧への対応
25 血圧変動の大きな後期高齢者-家庭血圧測定のピットフォール その1
26 夕方の血圧が異常低値-家庭血圧測定のピットフォール その2
27 心房細動を合併した高齢者高血圧-家庭血圧測定のピットフォール その3
28 脳・心・腎の臓器障害を伴う治療抵抗性高血圧
29 慢性腎臓病(CKD)を合併した高齢者高血圧
30 “血圧不安症”という新しい問題
トピック 1.Ca拮抗薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬,どちらがすぐれた薬剤か?
トピック2.降圧を超える効果は存在するのか?
解説 1.家庭血圧の正しい測り方指導
解説 2.家庭血圧計について
文献
主要高血圧治療薬一覧
索引
診察室や保健所などの医療機関で血圧を測定するために用いられている水銀血圧計の原型が発明されてからすでに100年が経過しています。また、普段処方している降圧薬が登場してからほぼ50年がたっています。
この間、高血圧の診断と治療は、病院や医院の診察室で医師や看護師が測定した血圧値をもとに行われてきました。しかし、ここ10年くらいの間に高血圧の診断に大きな変化が起こってきました。それはコンピューターの進歩により、家庭血圧計が登場したことによるものです。
家庭血圧計は瞬く間に家庭やスポーツクラブなどで使われるようになり、今やその普及台数は3千万台ともいわれ、「一家に1台」の時代になろうとしています。こういった背景から、患者さんに「自宅で測った血圧の値と先生に測ってもらった値が随分違うのですが、どちらが本当の値なのですか?」と聞かれることが多くなってきました。今までですと、「自宅で測った血圧値は測り方が間違っている可能性がありますから…」などと答える医師が多かったと思います。しかし最近の追跡研究の結果をみると、診察室で医師が測った血圧よりも、自宅で患者さん自身が測定した血圧値のほうが、将来の脳卒中や心筋梗塞などの血管病の発症と深く関係していることが明らかになってきたのです。
考えてみれば、一般の人にとって医院や病院はめったに訪れない特別なところです。血圧は精神的、身体的変動によって敏感に反応する身体指標ですから、特別な状況(=診察室)で測定した血圧が本来の血圧であるわけはないのです。
先日ある医師会の講演会で、会場の先生方に「高血圧の治療の判断基準として、先生方が測った血圧の値と患者さんが自宅で測って記録した家庭血圧値のどちらを主にし、どちらを従としていますか?」とお伺いしたところ、8割の方が「家庭血圧の値が主であり、診察室で測定した血圧は参考にすぎない」と答えられました。家庭血圧に対する正しい考え方が随分普及したなという印象を深く持ちました。
これまでは診察室血圧が目安であったので、持続性高血圧と白衣高血圧が主な治療対象だったのですが、これからは白衣高血圧の大部分は治療対象からはずれ、今まで隠れていた仮面高血圧と持続性高血圧が治療の対象となります。まさに高血圧診療の大改革といってもいいと思います。
本書は、週刊『日本医事新報』の連載「家庭血圧管理術」(2006年7月〜2007年9月に掲載)を再構成してまとめたものです。「家庭血圧管理術」では、患者さんが日誌に記入した家庭血圧の値をどのように読み取るか、それをもとにどのように降圧薬の選択や降圧目標値を設定するか、症例ごとに解説してきましたが、連載中、大変多くの読者から「本欄を読んで日常診療に役立てている」という励ましのお言葉をいただきました。その内容がさらにブラッシュアップされて1冊の本となりました。
本書が皆様の日常診療のお役に立てば望外の幸せです。
2008年1月
桑島 巖