近年、診療所の数は相変わらずのペースで増加していますが、経営ということになりますと厳しい診療所が多くなっているように感じます。業績面では成功組と失敗組だけで、中間組がないという状況がますます際立ってきています。開業して1年目で5000万円の所得(収入-経費)をあげている開業医がいるかと思えば、1年経っても患者数が1日10人前後で、用意した運転資金も底を尽きそうになっている方もいます。そしてその格差は時が経てば経つほど顕著になっています。10年前は失敗組などほとんどいませんでした。少しの大いなる成功組と多くのちょっと成功組でした。「開業すれば自分のペースで仕事ができ、結果としての収入も十分得られる」という〈開業の成功神話〉は既に過去のものとなってしまったのでしょうか。また、最近の開業セミナーのテーマも「失敗しない診療所開業」が主流となっていて、とにかく失敗しないための開業ノウハウの争奪戦が展開されているのです。
そのような中、診療所の経営について重点的にしたためた本書第1版や「診療所開業・経営の百貨本」として仕上げた第2版をお読みいただいたある医師から、「『納得そうなんだ!』は開業するかどうか迷っていた自分の背中を押してくれました。この本を読んでいくうちに、診療所を開業し経営していくという自らの姿が目の前にパッと広がり、迷っていたそれまでの自分とはまるで別人のように積極的に足を踏み出していく自分がいました。探していた本に出会えたという感動と感謝の気持ちを原田先生にお伝えしたい」と、有り難い感想をお寄せいただきました。この他にも「開業に関する本の多くは専門的な言葉で難しい内容のものが多いのですが、『納得そうなんだ!』は分かり易い言葉で読み易く、開業しようとする自分の気持ちに寄り添った丁寧な内容になっていましたので、迷わず購入しました」「まるで開業の教科書のようです」「5年経って読み返しても大いに参考になる、いつの時代にもサポートしてくれる、そんな本です」など、直接間接を問わず様々なご意見をいただきました。
そこで、第2版からすでに5年以上経過し、データや用語など古くなっている箇所などがあったことから、それらを修正し、新章「承継・閉院・再建ストーリー」(第3章)や電子カルテについての考察(第2章CASE41のCOLUMN)、既開業医や医療関連業者へのインタビュー記事を加えた(第4・5章)、改訂第3版を上梓させていただくことになりました。開業を目指す先生方、そして既に開業している先生方にもお役に立てますように……心をこめて。
2014年2月原田裕士