日本化学療法学会・日本感染症学会の合同調査委員会は1日、診療所医師を対象に初めて行った抗菌薬適正使用(用語解説)の意識調査の結果を発表した。患者が抗菌薬処方を希望した時に処方すると回答した医師は6割に上った。
調査は両学会合同の外来抗菌薬適正使用調査委員会(大曲貴夫委員長)が今年2月に1500の診療所を無作為抽出し調査票を郵送。回収数は274通(回収率18.3%)だった。
ウイルスによって引き起こされる感冒と診断した患者や家族が、抗菌薬処方を希望した時の対応について尋ねたところ、50.4%が「説明をしても納得しなければ処方」と回答。「希望通り処方する」も12.7%で、合わせて6割以上の医師が抗菌薬を処方すると回答した。一方、「説明して処方しない」は32.9%だった。
過去1年間で感冒と診断したときに抗菌薬を処方した割合は「0~20%」が最も多く62.0%。このほか、「21~40%」17.8%、「41~60%」7.4%、「61~80%」8.3%、「81%以上」4.5%だった。
感冒に抗菌薬を処方した理由については、多い順に「感染症状の重症化防止」29.8%、「細菌性二次感染の予防」25.8%、「ウイルス性/細菌性の鑑別に苦慮」24.4%、「患者・家族の希望」12.4%、「習慣的」0.9%だった。
感冒に最も多く処方した抗菌薬は「マクロライド系」35%、「第3世代セフェム系」31.8%、「ペニシリン系」18.8%、「ニューキノロン系」11.2%、「βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン」1.3%。
過去1年間で抗菌薬適正使用をどのくらい意識していたかを聞いたところ、「常に意識」(30.1%)、「かなり意識」(32.0%)、「多少は意識」(34.2%)を合わせると9割以上が意識していた。
このほか、政府が2016年に策定した薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの認知度は「人に説明できる」(1.9%)、「理解している」(21.0%)を合わせて2割程度。厚生労働省が昨年公表した抗微生物薬適正使用の手引きは、「活用している」が14.2%に留まった。
アクションプランの目標達成に必要な対策を複数回答で聞いたところ、「一般市民への広報」が最も多く66.8%に上り、次いで「患者への説明資料」(54.5%)、「外来感染症の治療マニュアル・手引き」(32.8%)と続いた。
結果を発表した具芳明氏(国立国際医療研究センター病院)は「感冒患者の多くに抗菌薬を処方している医師も少なくはなく、この群へのアプローチが重要で効果が高いと考えられる」と指摘。さらに、「ガイドライン・マニュアルや患者向けの説明資料のニーズが高く、診療所を意識した資材の作成が効果的と考えられる」と分析し、現場のニーズを意識したアプローチにより、外来での抗菌薬適正使用を効果的に推進できると期待を示した。