(秋田県 F)
ご質問の症状からは,外側半月板損傷が疑われます。半月板は大腿骨と脛骨の間にあり,それらの関節間のクッション(荷重の分散・吸収)と安定を司ります。そのため,半月板に由来する疼痛やクリックなどの症状は,膝関節の隙間(関節裂隙)に現れます。本症例の症状も腓骨頭のあたりと言われていますので,外側の関節裂隙を指すものと推察されます。
半月板に強い捻れと荷重が加わったときに断裂が生じます。断裂が生じると再度,損傷時のように大腿骨と脛骨間に荷重と捻れが加わったとき,断裂部を押し広げ,大腿骨が断裂した半月板を巻き込み,引っかかり感が出現します。また,その際に大腿骨が断裂した半月板を乗り越えクリック音が生じることが予想されます。
その瞬間を証明した報告は,私の知る範囲ではありませんが,半月板の術後,引っかかり感の消失とともに,半月板損傷症例に生じていたクリック音(振動)も軽減した報告はされています1)。半月板損傷による引っかかり感やクリック音を生じた後,膝関節周辺の筋がリラックスすると大腿骨と脛骨間にスペースが生じ,押し広げられた半月板が元の状態(位置)に戻るため,症状は軽減します。このような一連の半月板に由来する症状が出現する際に,膝や腓骨頭が外れたような感覚を訴える方はいらっしゃいます。
半月板は,膝に回旋(捻れ)を加えた疼痛誘発テストで検査され,MRIと併せて確定診断されます。本症例のように,外側半月板損傷を疑う場合は,一般に足先を内側になるように捻じる(大腿骨に対して下腿の内旋)と,痛みが誘発されます。そのため,あぐらや足先が内側に入る捻れを生活の中に入れない工夫が重要です。外側半月板は,円盤状半月板という半月板が厚く三日月型をしていない形態であることもあり,その場合,断裂が生じやすいと考えられます。また,本症例の年齢から外側型の変形性膝関節症も疑われ,その場合は,X線で膝関節外側の隙間の狭小化,骨棘(骨の増殖)の有無が評価されます。
膝関節には大腿骨と膝蓋骨(お皿)から形成する膝蓋大腿関節も含まれ,この関節のクリックの有無は,膝蓋大腿関節の変性を予期するという報告もあります2)。
筆者らも現在,膝関節から生じる音の研究を進めています。立ち上がり時の膝関節音の計測では,膝関節に変形があると立ち上がりから膝が伸びきる付近で,高い周波数が生じる点で健常状態と相違していることを報告しました3)。人間ドックには,膝関節の検査があることは稀です。関節音の検査から膝関節の状態を評価できれば,簡便なスクリーニング検査になると考えています。
【文献】
1) McCoy GF, et al:J Bone Joint Surg Br. 1987;69 (2):288-93.
2) Schiphof D, et al:Osteoarthritis Cartilage. 2014;22(5):631-8.
3) Ota S, et al:J Phys Ther Sci. 2016;28(10): 2904-8.
【回答者】
太田 進 星城大学リハビリテーション学部リハビリテーション学科理学療法学専攻准教授
小林健二 はしら整形リハビリクリニック院長