(福井県 K)
骨粗鬆症治療薬の開発時における骨折抑制効果を実証するための臨床試験は,原則として閉経後骨粗鬆症患者を対象に実施されています。それらの中で,骨折抑制効果のみならず安全性が実証された薬剤が,各国の規制当局により承認されています。
これらの薬剤の男性骨粗鬆症への応用については,まずエストロゲン製剤やエストロゲン受容体作動薬(selective estrogen receptor modulator:SERM)は厳格に適応外とされていることを確認しておきたいと思います。一方で,その他の薬剤に関しては,その薬理学的な作用機序に性差はないと考えられることから,男性骨粗鬆症に対する処方は,広く容認されているという現実があります。
男性を投与対象とすることの適否に関する考え方は,国により多少異なります。わが国では,通常,骨折抑制効果を実証する第Ⅲ相臨床試験(治験)において,少数例の男性患者を組み込むことが要求されています。少数例ですので,男性のみでは骨折抑制効果が実証されるには至りませんが,その効果と安全性のプロフィールが閉経後女性患者と同様であれば,男性骨粗鬆症に対しても処方が認められています。
一方,米国では,米国食品医薬品局(FDA)の方針により,男性のみの臨床試験が実施され,その効果が実証された薬剤のみが,男性骨粗鬆症に対して承認されるという仕組みになっています。臨床試験で,男性において骨折抑制効果のエビデンスが得られている薬剤を表1に示します1)。この表では,骨粗鬆症の病態を,原発性骨粗鬆症,前立腺癌に対するアンドロゲン遮断療法に関連する骨粗鬆症,ステロイド性骨粗鬆症の3つにわけて評価しています。
原発性骨粗鬆症ではアレンドロネート,リセドロネート,ゾレドロネートそしてテリパラチド(毎日注射製剤)に椎体骨折抑制効果が,ゾレドロネートにはさらに非椎体骨折抑制効果が認められています。一方,アンドロゲン遮断療法に関連する骨粗鬆症ではデノスマブにおいて椎体骨折抑制効果が示されています。ステロイド性骨粗鬆症ではテリパラチド(毎日注射製剤)に椎体骨折抑制効果が認められるとされています。
なお,わが国では男性に対するこのような臨床試験は実施されていません。また,男性における骨折抑制効果が実証されていないといっても,そもそもそのための臨床研究が実施されていない薬剤も多いことを申し添えておきます。
以上の実情と臨床成績を考慮して,男性骨粗鬆症の治療薬を選択して頂くことが望ましいと考えます。
【文献】
1) Ebeling PR:Curr Opin Rheumatol. 2013;25(4): 542-52.
【回答者】
竹内靖博 虎の門病院内分泌センター部長