著: | 田中 逸(横浜総合病院糖尿病センター長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 240頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2025年02月08日 |
ISBN: | 978-4-7849-5399-8 |
版数: | 第3版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
●初版から20年以上,多くの読者にご支持いただいたロングセラーの改訂第3版です。
●日常診療や健診・保健指導で生活習慣病に関わる医師・医療スタッフは,多くの専門的な知識を自分自身の頭の中で整理し,統合的に理解した上で自分の言葉で話すことが求められます。
●第3版では,国内外の新しいガイドラインやマニュアルに取り入れられた診断基準や指導指針,様々な疫学的研究のデータをまとめた総合解析,厚生労働省をはじめ関連学会・協会が行った調査報告などを取り入れ,著者の解釈や考え方を紹介しています。
●内容をきめ細かくアップデートし,参考文献や図表,質疑応答,索引もさらに充実しました。
SECTION 1 肥満と肥満症 1
1 ▶ 肥満と肥満症
1 ─ 肥満の現状
2 ─ 肥満の評価法
3 ─ 二次性肥満と体液貯留に注意
4 ─ 肥満症の診断
2 ▶ 肥満の科学
1 ─ 肥満の原因は何か
2 ─ 皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満
3 ▶ 肥満に対するアプローチ
1 ─ まず問題点を把握する
2 ─ 食事エネルギー量と栄養バランスの設定
3 ─ 賢い食べ方
4 ─ 運動療法のとらえ方
5 ─ 高度肥満者に対する医学的治療
SECTION 2 糖尿病と耐糖能異常
1 ▶ 糖尿病の基礎知識 .
1 ─ 血糖調節機序を理解する
2 ─ 糖尿病の発症メカニズム
3 ─ 日本人の糖尿病の特徴
4 ─ 糖毒性と合併症の原因を考える
2 ▶ 糖尿病の診断と治療
1 ─ 糖尿病の診断とスクリーニング
2 ─ 高血糖に対するアプローチ
SECTION 3 脂質異常症 91
1 ▶ 中性脂肪とコレステロールの代謝
1 ─ 中性脂肪の基礎知識
2 ─ コレステロールの基礎知識
2 ▶ リポ蛋白の基礎知識
1 ─ リポ蛋白とは
2 ─ リポ蛋白の代謝早わかり
3 ▶ 脂質異常症の病態
1 ─ 脂質異常症の診断
2 ─ 脂質異常症の分類
3 ─ 高中性脂肪血症の病態
4 ─ 高コレステロール血症の病態
4 ▶ 脂質異常症に対するアプローチ
1 ─ 問診と身体所見
2 ─ 動脈硬化症のリスク評価と管理目標
3 ─ 生活習慣改善のポイント
SECTION 4 高尿酸血症と痛風
1 ▶ 尿酸代謝の基礎知識
1 ─ 尿酸とは何か
2 ─ 尿酸代謝の基礎知識
3 ─ 高尿酸血症の原因
4 ─ 低尿酸血症の原因と注意点
2 ▶ 痛風発作と痛風腎
1 ─ 尿酸結晶の析出
2 ─ 痛風発作の原因と特徴
3 ─ 痛風発作より怖い痛風腎
3 ▶ 高尿酸血症に対するアプローチ
1 ─ 高尿酸血症における問題点
2 ─ 生活指導のポイント
SECTION 5 高血圧症
1 ▶ 血圧の基礎知識
1 ─ 血圧の意味
2 ─ 血圧の調節
2 ▶ 高血圧症の分類と原因
1 ─ 測定と診断
2 ─ 二次性高血圧と本態性高血圧
3 ─ 生活習慣との関わり
3 ▶ 高血圧に対するアプローチ
1 ─ 問診上のポイント
2 ─ 血圧状況の評価と目標
3 ─ 生活習慣改善のポイント
SECTION 6 動脈硬化症
1 ▶ 動脈硬化で最も問題になるタイプは?
1 ─ 動脈硬化には4つのタイプがある
2 ─ 粥状動脈硬化の形成
3 ─ 粥状動脈硬化と急性冠症候群
2 ▶ 動脈硬化症の現況と早期診断
1 ─ 虚血性心疾患と脳血管疾患の現況
2 ─ 健診やドックでの検査法
3 ▶ 動脈硬化症のリスク因子とその管理
1 ─ 動脈硬化症のリスク因子
2 ─ リスク因子の管理
質疑応答
Q 1 BMIの理想値
Q 2 脂肪肝になりやすい体質
Q 3 脂肪肝がインスリン抵抗性をきたす機序
Q 4 飲酒は脂肪肝の原因になるか
Q 5 脂肪筋と霜降り
Q 6 脂肪肝と脂肪筋の変化
Q 7 減量時に筋肉も減少する理由と対策
Q 8 ダイエットとリバウンドの繰り返し
Q 9 肥満者の減量目標
Q10 地中海式ダイエットは日本人にも有効か
Q11 高度肥満と精神疾患
Q12 高齢者のサルコペニア
Q13 肥満児に対するアプローチ
Q14 睡眠時無呼吸症候群の発見と対処
Q15 食後血糖の正常値
Q16 75g-ブドウ糖負荷試験の妥当性
Q17 75g-ブドウ糖負荷試験の副作用
Q18 日常生活でも反応性低血糖を起こすことがあるか
Q19 インスリンの正常値
Q20 HbA1cの検査値に影響する因子
Q21 HbA1cを測定する利点と欠点
Q22 グリコアルブミン(GA)とは
Q23 1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)とは
Q24 連続グルコースモニタリング(CGM)とは
Q25 無自覚性低血糖とは
Q26 尿糖検査のポイントとコツ
Q27 腎性糖尿とは
Q28 妊婦には尿糖検査が有用
Q29 空腹時血糖のみ高値
Q30 血糖正常者にみられる尿ケトン体陽性
Q31 糖尿病家族歴陽性者の検査
Q32 なぜ肥満がなくても妊娠糖尿病になるのか
Q33 妊娠糖尿病から糖尿病への進展
Q34 1日4回以上の分割食
Q35 夜食の習慣がある方への対処
Q36 食事エネルギー量の遵守より食物繊維を多く摂るほうが優先
Q37 夜勤をする方の食事はどうすべきか
Q38 特保食品とサプリメント
Q39 アルコールが血糖に及ぼす影響
Q40 アルコールは中性脂肪と尿酸を上げる
Q41 禁煙するとHDLコレステロールは上昇するか
Q42 食後の中性脂肪上昇
Q43 急激な中性脂肪の低下
Q44 コレステロール制限食の効果
Q45 超悪玉のコレステロール
Q46 HDLコレステロールのみ低値
Q47 トランス型脂肪酸の割合は制限しなくてよいか
Q48 脂質異常症の薬剤はいつまで
Q49 LDLコレステロールの下限値
Q50 尿酸値の変動幅
Q51 尿酸検査のタイミング
Q52 正常尿酸値と痛風発作
Q53 プリン体の過剰摂取
Q54 痛風発作を起こした場合,禁酒すべきか
Q55 高尿酸血症者の紹介
Q56 痛風腎のチェック
Q57 食塩感受性を検査する必要はあるか
Q58 海水塩や岩塩の効果
Q59 食後の一時的な血圧低下
Q60 起立性低血圧の原因
Q61 血圧の変動と評価
Q62 24時間血圧測定の有用性
Q63 心臓・脳の専門的ドックは受けたほうがよいか
Q64 無痛性心筋虚血
Q65 脳卒中の簡易チェック法
Q66 抗酸化作用のある特保食品
Q67 地中海式ダイエットやDASH食は動脈硬化の予防になるか
Q68 ナッツ類には動脈硬化の予防効果があるか
Q69 高齢者の肉食の是非
Q70 睡眠異常は動脈硬化のリスク因子か
索 引
〈第3版〉序文
2003年に『セミナー生活習慣病』の初版を刊行以来,早いもので21年が経過した。5年ごとに改訂を行ってきたが,今回また新たな改訂版を出版できたことは,筆者にとって大きな喜びである。この21年間に予想をはるかに上回る多くの方々が本書をご利用下さり,多数のご意見・ご感想をお寄せ頂いたことは筆者にとって大きな財産になった。改めて,読者の皆様に心より感謝申し上げたい。
2020年からの新型コロナウイルス感染症の大流行で,世界中が大きな混乱に陥った。これまでの社会と生活を取り巻く環境が一変し,医療体制も大きな打撃を受けた。わが国では徐々に混乱から立ち直りつつあるが,感染自体はいまだ断続的に続いている。感染症の大流行は我々の生活習慣を大きく変えた。テレワークの拡大や不要不急の外出自粛などで活動量が減少し,食事に関わる状況も変化した。様々な制約や我慢を強いられる生活でストレスも増大した。これからも未知の病原体による新たな感染症の大流行は起こるかもしれない。さらに,地球温暖化に伴う異常気象,海水温上昇による生態系の変化,農林水産業に従事する方々の高齢化と後継者不足,これらは日本の食糧自給率をさらに低下させることが危惧されている。我々を取り巻く環境が今後どのように変化するのか,そして日本全体がどのような方向に向かうのか,誰にもわからない。
しかし,どのような時代になろうとも,我々が生きていく上での基本的な考え方は,「We are what we eat. (人は食べるものでできている)」,「We are whatwe do. (人は行うことで成り立っている)」であろう。何を食べ,どのように行動するか,これは生活習慣病の予防・治療にも当てはまる重要なコンセプトである。厚生労働省が定める五疾病は,がん,脳卒中,心筋梗塞等の心血管疾患,糖尿病,精神疾患である。がんと精神疾患以外は生活習慣病であるが,一部のがんも生活習慣に関わっている。生活習慣病は生活環境と表裏一体であるが,今後の日本はこれまで以上に生活環境が変化していく可能性がある。これをふまえて生活習慣病の予防・治療に関わる医師とスタッフがなすべきことは,各個人に対して適切でわかりやすいアドバイスや指導を行うこと,地域や職域における啓蒙・教育活動を展開すること,社会に向けて必要かつ有用な情報を提供・発信することである。その参考であり,ヒントにもなることを目的に,今回の改訂版を執筆した。
今回は,国内外の新しいガイドラインやマニュアルに取り入れられた診断基準や指導指針,様々な疫学的研究のデータをまとめた総合解析,厚生労働省をはじめ関連学会・協会が行った調査報告などを取り入れ,筆者なりの解釈や考え方をご紹介した。また,2018年に刊行した前回版の内容を吟味し,重要と思われる箇所は継続的に掲載することとした。質疑応答のパートも,新たに本文に取り入れた内容は削除し,代わって最近頂いた質問を加えて,合計70編とした。人に対して適切な説明やアドバイスを行うには,多くの専門的な知識を自分自身の頭の中で整理し,統合的に理解した上で自分の言葉で話せることが求められる。本書がそのためのお役に少しでも立てればと願っている。
2025年1月
田中 逸