株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

心臓安全性評価【TdPへの対策は行き届いているが,心筋に傷害を与える薬物に関する検討は不十分】

No.4914 (2018年06月30日発行) P.57

熊谷雄治 (北里大学病院臨床試験センターセンター長)

登録日: 2018-07-03

最終更新日: 2018-06-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

循環器系治療薬以外で,致死的な不整脈であるtorsade de pointes(TdP)を生じる薬剤が存在することはよく知られている。抗アレルギー薬terfenadineと抗真菌薬ケトコナゾールを併用した患者にTdPが発現したことが報告されて以降,危険性が指摘されてきた薬剤は少なくない。薬剤性TdPは薬物が心筋細胞活動電位の中でも,カリウム電流を阻害することによって発生のリスクが増大するものである。カリウム電流の阻害は体表面心電図ではQT間隔の延長として観察できる。

潜在的なTdPのリスクの有無を検討するために,新薬開発の過程ではICH-E14ガイドラインが制定され,ほとんどすべての新薬について心電図QT間隔の検討が必須となっている。この効果か,ICH-E14施行以降はTdPにより市場を撤退した薬剤はない。臨床家にも薬剤性TdPの重要性はよく認識されており,その発現は減少しているものと考えられている。

一方で,心筋細胞そのものに傷害を与える薬物について問題提起が行われている。抗癌剤はがん細胞への効果,生存期間の延長などが重要視されてきたが,もともとアントラサイクリン系などの抗癌剤は薬理作用として心筋傷害があることが知られており,心疾患によるQOLの低下,死亡などが無視できなくなっている。最近の多剤併用療法が抗癌剤の心毒性にどのような影響を与えるかについては,十分な検討が行われていると言えない状況にあり,cardio-oncologyの必要性が認識されている。早い段階から心毒性の徴候を検出し,個々の対応が可能な体制の確立が求められる。

【解説】

熊谷雄治 北里大学病院臨床試験センターセンター長

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top