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生活習慣病の視点からみた骨粗鬆症 [内科懇話会]

No.4782 (2015年12月19日発行) P.42

司会: 紫芝良昌 (元 虎の門病院分院長・副院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-31

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  • 【司会】 紫芝良昌(元 虎の門病院分院長・副院長)

    【演者】 竹内靖博(虎の門病院内分泌代謝科部長)

    骨折リスク因子には糖尿病や高血圧が含まれている。また,骨粗鬆症と動脈硬化に共通する因子としてエストロゲン欠乏がある

    脆弱性骨折があって,骨密度がYAM 80%未満,脆弱性骨折がなくてもYAM 70%以下で骨粗鬆症の薬物治療を開始する

    薬物治療には,活性型ビタミンD3,ビスホスホネート,選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)などが使用される

    骨粗鬆症の現在の考え方と実態

    生活習慣病は2型糖尿病や高血圧が中心になるわけですが,それらの疾患と骨粗鬆症の病因・病態とはかなり共通部分があることが,最近の研究からわかってきています。皮質骨の中を海綿骨が埋めていますが,骨粗鬆症とは,主に海綿骨が薄くなったり断裂することで穴が大きくあく病気です。高年になって進行すると,皮質骨も薄くなって骨全体が脆弱化します。特に,閉経後早期から60~70歳代は海綿骨を中心に骨量が減少します。
    骨粗鬆症を背景とする骨折は,骨折部位がかなり限定されます。比較的若い60歳前後の女性に多い骨粗鬆症性の骨折は転んで手をついたら折れる橈骨遠位端伸展型骨折(コーレス骨折)で,手首がランダムに骨折するわけではありません。60~70歳代では椎体の変形や潰れることで,椎体圧迫骨折を起こします。圧迫骨折で痛みを感じる人は全体の1/3程度しかいないことは,洋の東西を問わず知られています。80歳代以降では,転ぶときは斜め後ろによろけて転ぶことが多く,大腿骨近位部骨折を起こします。70歳代以降では,胸・腰椎の側面像を見て,変形があれば骨粗鬆症と診断します。変形があれば大腿骨近位部骨折の大きなリスクになることも,よく知られた事実です。
    現在,わが国では「原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)」が用いられており,脆弱性骨折を重視したものになっています(表1)。脆弱性骨折の定義は,一般的に,立った状態から何らかの形で床に崩れ落ちて骨折する,あるいはそれよりも弱い外力で骨折する場合を指します。

    診断基準では,最初に既存脆弱性骨折の有無を見ます。脆弱性骨折や椎体骨折と大腿骨近位部骨折があった場合,ほかの特殊な疾患が除外されれば骨粗鬆症と診断します。現在は高齢者の骨折予防が優先されるべき課題ですので,簡便に診断をつけて速やかに治療に入るという考え方です。また,そのほかの脆弱性骨折の場合は骨密度(bone min­eral density)を何らかの形で測定して,それが若年成人平均値(young adult mean:YAM),つまり,20歳代の成人健常者の骨密度を100%として,80%未満である場合は骨粗鬆症と診断します。
    骨密度が最も重要になるのは既存脆弱性骨折がない患者の場合です。客観的,定量的な評価法が今のところ日本で独自に設定したYAMとの比較しかなく,70%以下,もしくはWHOが提唱しているTスコア-2.5SD以下を骨粗鬆症と診断します。Tスコア-2.5SDとYAM 70%はほぼ一致すると考えられます。
    図1はわが国の脆弱性骨折予防のための薬物治療開始基準です。大腿骨近位部または椎体骨折があれば,除外診断を適切に行った上で,すぐに治療を開始します。この2つの骨折がなくほかの脆弱性骨折がある場合は,骨密度を評価しYAMの80%未満の場合に治療を開始することになります。脆弱性骨折がまったくない場合は,骨密度がYAMの70%以下もしくはTスコア-2.5SD以下の場合に骨粗鬆症と診断して治療を開始します。さらに,以上のように骨粗鬆症との診断には至らない場合でも,骨密度がYAMの70%より大きく80%未満の症例では,骨折リスク評価手段であるFRAX1397904493により10年間の骨折確率が15%以上と推定される場合や,両親のいずれかに大腿骨近位部骨折を認める場合には,骨折リスクが十分に高いと判断されるため,骨粗鬆症治療薬の開始を勧めることになっています。

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