No.4919 (2018年08月04日発行) P.24
二木 立 (日本福祉大学相談役・大学院特別任用教授)
登録日: 2018-08-06
最終更新日: 2018-08-01
6月15日の閣議決定「骨太方針2018」は、「力強い経済成長の実現に向けた重点的な取組」の1つに「新たな外国人材の受入れ」を掲げ、「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する」ことを決定しました。
特に介護分野では、次のように踏み込んで述べました。「介護の質にも配慮しつつ、相手国からの送出し状況も踏まえ、介護の技能実習生について入国1年後の日本語要件を満たさなかった場合にも引き続き在留を可能とする仕組みや、日本語研修を要しない一定の日本語能力を有するEPA介護福祉士候補者の円滑かつ適正な受入れを行える受入人数枠を設けることについて検討を進める」。厚生労働省は、この閣議決定を受けて7月2日、社会福祉法人が行う海外事業と介護職種の外国人技能実習生受け入れに関する課長通知を出しました。
本稿では、介護分野への海外人材確保策の有効性について考えます。私はこれには短期的効果しかなく、長期的には、日本国内で介護人材を確保することを目指すべきであり、それは看護職の過去の「成功体験」に学べば不可能ではないと考えています。
私は上述した介護分野への海外人材確保策は、人材不足に悩む介護業界の政府・厚生労働省へのねばり強い働きかけの成果であり、今後、外国人介護労働者の人権や給与・労働条件が日本人と同等に確保される形での具体化が図られれば、短期的には、ある程度の効果が期待できると思っています。
しかし、長期的には、それは、2025年には38万人に達すると推計されている介護人材不足解消の「切り札」にはならないとも考えています。以下、この点についての、私の「客観的」将来予測と価値判断を述べます。