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胸痛[今日読んで、明日からできる診断推論 実践編(4)]

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  • 病 歴(続き)

    胸痛は前胸部を圧迫する持続痛であり,移動することはなかった。随伴症状として,頸部から両肩への放散痛,吐気を伴っていた。姿勢や呼吸による疼痛の増悪はなかった。労作時に胸痛を起こしたことはなく,このようなことは今回が初めてだった。最近,寝込んではいない。最後に食事をしたのは,4時間前の昼食だった。
    既往歴:10年前より本態性高血圧,脂質異常症(虚血性心疾患,深部静脈血栓症はない)。
    内服歴:アムロジピン,リピトール。家族歴:特記事項なし(心疾患,突然死はない)。
    喫煙:20本/日×45年。飲酒:機会飲酒。アレルギー歴:なし。


    分析的アプローチ

    ■なぜその疾患名が消えたのか

    ①「考えられる疾患」

    「高血圧・脂質異常症の既往」「喫煙歴」は動脈硬化関連疾患を想起させる。「前胸部を圧迫する持続痛」「頸部から両肩への放散痛」は,ACSの可能性を高めている。「移動しない痛み」は大動脈解離の可能性を下げ,「姿勢・呼吸運動による増悪がない」ことは気胸や心膜炎の可能性を下げる。ACSの可能性が高まっているため,12誘導心電図を急いで行う必要がある。現時点での鑑別疾患の追加はない2)
    身体診察では,胸痛が圧痛を伴わない,全胸部の漠然とした指で指し示せない痛みであることを確認する。脈拍欠損は大動脈解離の可能性を高め,出現頻度は上肢2~15%,下肢7~18%である。大動脈解離からACSをきたすこともあるので,しっかりと触知する。

    ②「見逃し注意!」

    「最近,寝込んではいない」ことで,肺塞栓症も強くは疑わない。「安静時の急性発症の痛み」から,筋骨格系の痛みの可能性は下がる。また,「食事との関連がない」ことから消化性潰瘍,胆嚢・胆管系疾患の可能性は下がる。「飲酒歴がない」ことから膵炎の可能性も下がる。「圧迫されるような持続痛」であることから帯状疱疹の可能性は下がる。
    身体診察では,皮疹・胸腹部の圧痛がないことを確認する。

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