2016年度に心中以外の虐待による死亡者数は49人。そのうち0歳が32人で、全体の65.3%を占めた―。厚生労働省は8月30日、「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第14次報告)」を公表した。
これによると2016年度の虐待死事例は67例(77人)。うち、心中以外の事例は49例(49人)、心中による事例は18例(28人)だった。心中以外の事例の年齢別内訳は0歳が32人と最多。全体の65.3%を占めており、調査を開始した2005年以来、最も高い割合となった。0歳児の中でも生後4カ月までの間に死亡している事例が約8割に上った。
虐待の類型で最も多かったのは、身体的虐待で27人(55.1%)。ネグレクトは19人(38.8%)だった。
養育者(実母)の心理的・精神的問題について、心中以外の事例で最も多かったのは、「育児不安」で14例(28.6%)。次いで、「養育能力の低さ」が10例(20.4%)だった。一方、心中による事例では「うつ状態」が5例(27.8%)と最多。「精神疾患(医師の診断によるもの)」が4例(22.2%)だった。
報告書はこうした現状を問題視し、国への提言を明記。「妊娠期からの相談支援体制の充実強化は、虐待の発生予防には特に重要」と指摘し、医療機関や市町村が支援の必要な特定妊婦や家庭を把握できる体制整備を求めた。
虐待死事例の中に、精神疾患のある養育者による事例が例年一定数含まれていることを踏まえては、精神科医との連携の重要性を強調。2016年度診療報酬改定で「ハイリスク妊娠管理加算」「ハイリスク分娩管理加算」「ハイリスク妊産婦共同管理料」の算定対象となる合併症に精神疾患が加わったことや、18年度改定で「ハイリスク妊産婦連携指導料」として精神疾患を合併した妊産婦に対する多職種連携による外来診療の実施について評価が新設されたことなどに触れ、「子どもの最善の利益を保障するという観点に立った上で、精神疾患のある養育者に対して適切な支援が行われるよう、保健・医療・福祉の連携をより一層強化していくことを、改めて周知することが必要」と訴えた。