厚生労働省は9月27日、新専門医制度の2018年度専攻医について、日本専門医機構が14基本領域の採用数にシーリング上限を設けた5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)のうち3府県で、実際の採用数が上限を上回った領域があったとするデータを公表した。
データは、医道審議会に新設された「医師専門研修部会」の初会合に提出されたもの。それによると、採用数が上限を超えていたのは計4領域で、①小児科では東京で11人、②精神科では東京で7人、③耳鼻咽喉科では東京で2人、大阪で1人、④泌尿器科では大阪で1人、福岡で3人―の超過がみられた。新専門医制度の専門研修はプログラム制が原則だが、多様な働き方に配慮してカリキュラム制による研修も認められる。データにはカリキュラム制の専攻医も含まれている。
部会では、東京へのシーリング強化を主張する意見や日本専門医機構の組織運営に対する批判が相次いだ。 参考人として出席した機構の今村聡副理事長は、上限を超えた採用数となった要因について、研修を従来のカリキュラム制からプログラム制に移行するに当たり、シーリングの根拠となる「過去5年の採用実績の平均値」の把握が不正確だった学会があると説明した。
今村氏はまた、機構として来年度の東京の採用上限数の5%削減を決定したことを報告。「話し合いの段階では全ての基本領域学会が(削減に)強く反対したが、これは世の中の要請だと説得して了承を取り付けた」とした上で、今後はデータを見ながら対応方針を決めていく考えを示した。
同日の部会で厚労省は、医師法施行規則の改正省令案も示し、了承された。研修プログラムの内容が地域医療に重大な影響を及ぼす恐れがある場合などに、厚労相が必要な措置の実施を意見・要請できる団体として、日本専門医機構のほかに、総合診療を除く基本領域18学会を位置づける。同省は10月初週に数日間パブリックコメントを募集した後、改正省令を発出する。
改正法では、新専門医制度において、厚生労働相が都道府県知事の意見を聴いた上で、医師のキャリアや地域医療の観点から専門医機構等に必要な措置の実施を要請できる仕組みが設けられた。同部会が都道府県の意見を集約する場となる。
厚労省は次回会合(10月15日開催予定)で、都道府県からの意見をまとめ、専門医機構等に要請を行う。法律上、専門医機構等は国からの要請に極力応じなければならないとされているため、2019年度専攻医の募集開始は10月中旬以降になる。
(写真キャプ) 専門医機構から参考人として出席した今村聡副理事長(手前から2人目)、兼松隆之副理事長(一番手前)