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シャーガス病とわが国におけるシャーガス病の現況

No.4928 (2018年10月06日発行) P.55

早川 智 (日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授)

三浦左千夫 (長崎大学客員教授/NPO法人MAIKEN代表)

登録日: 2018-10-04

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  • シャーガス病は,在日ブラジル人にキャリアが多くみられますが,多くの医師は鑑別診断に入れていない状況と思われます。シャーガス病について,ご教示下さい。わが国における唯一の専門家である長崎大学・三浦左千夫先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    早川 智 日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授


    【回答】

    【多数の潜在感染者の存在を念頭に置く必要がある】

    シャーガス病の病原体はTrypanosoma cruzi(T. cruzi)です。本病原体に汚染された吸血昆虫サシガメの排泄物中に病原体があり,経皮的に感染します。血行を通じ細胞組織内に侵入,急性発症をみる人はわずかであり,長期間不顕性感染状態を継続し,発症をみない人もいます。

    1950年には,ブラジル在住日系移民での母子感染シャーガス病の急性期と診断された症例の報告1)があり,シャーガス病は日系移民の歴史とともにあることを我々は認識しなくてはなりません。最近では経口的感染(病原体が多量に摂取される)による急性発症例も,ブラジル,ボリビアで報告されています2)~4)

    わが国では1990年以降,ラテン米国日系移民子弟の2~4世が労働力として祖国であるわが国へと出戻る移民現象が起こり,今日でも23万人近くの在日ラテン米国人(含む非日系)が定住しています。その中にはシャーガス病潜在感染者も多く,また献血協力した人にも感染者が複数存在しました。幸い,輸血による二次感染は否定されましたが,このような事象はほかにも多数あると危惧しています。なぜならシャーガス病は,通常の経皮感染の場合すぐに発症することは少なく,感染者の3割程度が有症化し,さらにその1割が重篤な慢性末期症状を呈すると言われているためです。

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