【有意な改善がみられたものの十分な知見がなく,今後の症例の蓄積が期待される】
血管肉腫は高齢者の頭部皮膚に好発し,血管内皮への分化を示す悪性腫瘍である。日本人の患者における5年生存率は10%以下とされ,きわめて予後不良であることが知られている。原発病変に対して広範囲に切除しても早期に再発・転移する症例が少なくないことから,放射線照射とパクリタキセルなどのタキサン系抗癌剤で加療することが多い。しかしながら,本治療で高い有効性が得られる一方で,経過中にパクリタキセルに対して不応となり,再発する症例をしばしば経験する。
近年,パゾパニブとエリブリンが血管肉腫を含む軟部肉腫の治療薬として承認され,新規の治療薬として期待されている。
パゾパニブは血管内皮増殖因子受容体,血小板由来増殖因子受容体および幹細胞因子受容体に対する阻害作用を有するマルチキナーゼ阻害薬である。軟部肉腫に対する第3相臨床試験(PALETTE試験)が施行され,アントラサイクリン系薬剤を含む前治療に対して抵抗性を示す軟部肉腫患者に対して使用したところ,プラセボ群に対して有意に無増悪生存期間の延長を認めた。
また,エリブリンは新規の機序を有する微小管阻害薬で,アントラサイクリン系薬剤を含む前治療に対して抵抗性を示す平滑筋肉腫または脂肪肉腫患者における第3相臨床試験で,ダカルバジン投与群と比較して全生存期間の有意な延長を認めた。
本2薬の血管肉腫に対する治療効果についてはまだ十分な知見がなく,今後の症例の蓄積が期待される。
【解説】
中村貴之 筑波大学皮膚科病院講師