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胸痛・胸部不快感[Dr.徳田の診断推論講座(6)]

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  • 虚血性心疾患以外の血管系疾患

    大動脈解離,胸部大動脈瘤破裂または切迫破裂,肺塞栓症などがある。これらはいずれも緊急度と重症度の高い疾患である。それぞれの病歴の特徴を表3〜5で順に示す。
    大動脈解離の危険因子の1つである大動脈壁の中膜変性には,Marfan症候群やEhlers-Danlos症候群(血管型)などがある。大動脈解離の「虚血症候」では,片側の脈拍欠損(対称性の破れ),血圧の左右差,脳梗塞(右の総頸,特に右大脳半球),急性心筋梗塞,などがある。上行大動脈の拡張があると急性大動脈弁閉鎖不全を起こす。心囊腔入口へ解離が及んだ場合には,心タンポナーデを起こす。
    胸部大動脈瘤破裂または切迫破裂も,強い胸痛が特徴的である(表4)。解離と異なり,これは移動性ではないことが多い。隣接した組織の圧迫症候には,嗄声,嚥下障害,気道狭窄,上大静脈圧迫などがある。
    肺塞栓症による胸痛は,急性肺動脈拡張または肺梗塞があるときに生じるものと考えられている(表5)。大量肺塞栓は胸骨裏面の痛みを起こす。小さな塞栓では,限局性の肺梗塞により,側胸部で胸膜性の痛みを生じることが特徴。


    肺・胸膜・心膜疾患

    これには,気胸,肺炎,胸膜炎,心膜炎などがある。表6にそれぞれの疾患における病歴の特徴を示す。心膜炎では,壁側胸膜の感覚枝の刺激により,痛みは肩や頸部から腹部や背中に至る範囲に生じることがある。また,心膜炎では体位変換で痛みが変化する。臥位で増悪し,坐位や前かがみの姿勢で軽減する。

    消化器系疾患

    消化器系の疾患,特に食道疾患による痛みは,しばしば心筋虚血による痛みと鑑別が困難なことがあるので,心筋虚血を除外することを優先すべきである。表7に病歴の特徴を示す。これらのうち,食道痙攣は狭心症との鑑別がかなり困難である。また,食道破裂は重篤な疾患であり,キラー胸痛の1つに入れておく。
    胸部症状は,横隔膜より下位の消化器系疾患から起こることがある。これらは通常,胸部症状と同様に腹痛を生じ,身体運動とは無関係に起こり,食事と関係することが多い。消化性潰瘍の典型例では,胃潰瘍において食後60~90分で症状が増悪し,十二指腸潰瘍において食後に症状が軽快する。

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