文部科学省は23日、医学部を置く全国の81大学に対し実施した入試に関する緊急調査の中間まとめを公表した。「複数の大学においては、不適切である可能性の高い事案が発見されている」とし、性別や年齢などの属性で取扱いに差異を設けているといった具体的な事例を明示した。
中間まとめでは、不適切である可能性の高い事案として、①学力検査での得点が同等でも女性や多浪生は面接試験でより高評価を得ないと合格とされない、②調査書や出願時の書類を審査・評価する際に現役生等に加点し多浪生には加点しない、③同窓生の子女等、特定の受験者は合格圏外であっても合格させている、④補欠合格者への繰上合格の連絡の際に得点順ではなく、より下位の特定の受験者に先に連絡している―の4事例を挙げた。文科省は、受験生や社会に対し、公正性の説明が必要だとして、「各大学への事実確認と報告を求めるとともに、大学自らが公表することが重要」と指摘している。
疑惑を招きかねない事案としては、「出願書類に保護者や家族の氏名・職業・出身校を記入させた上で面接試験でも家庭環境や経済状況について詳細に質問している」「補欠合格者の決定や繰上合格の手続きが学長、学部長、入試委員長など一部の教職員に一任されており、その顛末や手続きの公正性を証明する資料や記録が残されていない」「年齢による取扱いの差異をマニュアル上容認している」といった事例を示した。
中間まとめではまた、好事例がみられたことも明らかにした。具体的には、入試における配慮事項や禁止事項を記載した人権配慮ポリシーを策定している事例、面接試験の評価者の男女のバランスに配慮したり、基礎教育の教員、臨床指導の教員、精神科医・カウンセラー等を組み合わせて評価観点のバランスに配慮している事例などがあったという。 中間まとめを受け、柴山昌彦文科相は「2019年度入学者選抜の公正な実施に向けて、再度入学者選抜方法の点検や周知を行うなど必要な対応を取られるよう期待する」とコメントしている。
緊急調査は、東京医大による入試での不正な得点調整問題が発覚したことから実施。文科省は東京医大を除く80大学を対象に訪問調査を行い、年内にも最終とりまとめを公表する方針だという。
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