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施設系在宅における医療と介護の連携[長尾和宏の町医者で行こう!!(91)]

No.4934 (2018年11月17日発行) P.24

長尾和宏 (長尾クリニック院長)

登録日: 2018-11-14

最終更新日: 2018-11-14

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施設系在宅からの電話ばかり

この10数年間、在宅医療制度が強力に推進されてきた。その結果、在宅医療に関わる開業医が全国各地で徐々に増えてきた。そして住み慣れた自宅だけでなくサービス付き高齢者向け住宅や老人ホーム、グループホームなどの「施設系在宅」も増えている。そこに住民票があるので「自宅」ではあるが、「長年住み慣れた我が家」とは言えないので、私は勝手に「施設系在宅」と呼んでいる。以前はこれらの施設系在宅で診療を依頼される機会は少なかった。しかし2014年度診療報酬改定で集合住宅への訪問診療料が4分の1に減額されて以降、依頼が舞い込むようになった。

施設系在宅と住み慣れた自宅での在宅医療はかなり勝手が違うので、戸惑うことが多い。たとえば看取りが近くなったとき、家族とのコミュニケーションが希薄な分、自宅の在宅よりも説明や話し合いに多くの労力を要する。また夜間にかかってくる電話の大半は「施設系在宅」の介護職員からである。軽微な発熱、嘔吐、下痢、転倒でパニックになった介護職員が深夜にどんどん電話をかけてくる。些細なことでも逐一「医師への電話報告」を全職員に義務づけている施設もある。「39度以上の発熱=自動的に救急搬送」を入居時の契約書に書いているところもある。過剰な医療要請は介護訴訟やトラブル回避のためであろう。あるいは介護系職員の医療に関する基礎知識が不十分なことも多い。深夜もバイタルサインを測り続けて電話報告することが連携であると思っている介護職員もいる。医師に報告することで責任転嫁し免責される、と考える人もいる。そうした電話を深夜に受けるのが嫌で施設系在宅を断る開業医も少なくない。いずれにせよ夜間帯の電話連絡が多いことが、施設系在宅の特徴である。

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