【小児科と成人科の連携と,患児への温かい教育が必要である】
かつては救命が困難だった先天性心疾患も,外科手術,薬物療法などの進歩によって治療が可能な時代になった。これに伴い,精査・加療入院,あるいは再手術を含め長期管理の必要な例も増加してきた。私たち小児循環器医は,長期管理を経て成人を迎えた患者に,年齢に応じた適切な医療を提供する必要がある。成長した患者は成人特有の問題にも対応しなくてはならない。小児科をどのように卒業して,成人診療科へ巣立っていくのが望ましいだろうか。「移行期医療」は近年重要な課題として認識されるようになった1)。
現在,九州大学病院では,院内外から成人先天性心疾患患者を広く受け入れ,循環器内科と小児科が協力して診療にあたっている2)。入院を要する場合は,基本的に成人病棟を利用する。理想的な「移行」には送り出す小児科と受け入れる成人科の緊密で細やかな連携が欠かせない。患者の意識変革も大きなウエートを占める。小児医療は親が代諾者として意思決定を担うため,患児の多くは自身の疾患のことがわからず,既往手術や現在の内服薬の意義を説明できない。患者自身が治療選択の意思を示す成人医療の世界に踏み出すために,温かい教育が必要である。先天性心疾患は頻度も高く,様々な小児疾患の移行期医療のモデルとして,私たちはこの取り組みをより良いシステムに発展させたいと考えている。
【文献】
1) 山村健一郎:日小児循環器会誌. 2017;33(4): 281-6.
2) Yamamura K, et al:Circ J. 2017;81(8):1236-7.
【解説】
永田 弾*1,山村健一郎*2,大賀正一*3 *1九州大学小児科診療講師 *2トロント総合病院 *3九州大学小児科教授