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ぜひ知ってほしい! HIV感染症の“いま” HIV陽性者の立場から[提言]

No.4942 (2019年01月12日発行) P.24

高久陽介 (日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス代表理事)

登録日: 2019-01-09

最終更新日: 2019-01-09

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  • 〔要旨〕もし,みなさんの医療機関にHIV感染者が受診に訪れたとき,他の患者と同じように診療・ケアができるだろうか。「あまりよく知らないから」「スタッフや他の患者に感染するのでは」「風評被害が心配で」といった理由で診療を拒む前に,まずはHIV感染症やエイズに対する知識とイメージをアップデートしてほしい。

    1 わが国におけるHIV・エイズの理解度

    多くの場合,私たちHIV(human immunodeficiency virus)陽性者(検査でHIV陽性と判明した人)にとって,HIV感染症はいまや“慢性疾患”になりつつあると言ってよい。毎日の服薬によってウイルスを検出限界以下まで抑制することが可能となり,錠剤の数や副作用の負担も大きく軽減され,寿命は非陽性者と変わらず,元気に働き暮らすことができるようになった。そして,HIVのウイルス量が検出限界以下であれば,他者への感染リスクがなくなることも明らかになっている。しかし残念ながら,多くの人はまだこうしたイメージでHIVをとらえていない。性感染症であること,ゲイ男性に感染者が多いことなどから,HIV陽性者は差別や偏見の対象となりやすく,私たちも自身のステータスを明らかにすることがほとんどないことも要因のひとつだろう。

    中高年世代の人ならば「エイズ・パニック」という言葉が記憶にあると思う。HIV・エイズ(aids)が世界に登場した1980~90年代前半は治療法も開発途上で,まさに「HIV感染=死」であった。報道によって,性産業従事者やゲイ男性など特定の人々だけが罹患するかのようなイメージが流布された。また,わが国では「薬害エイズ事件」の影響も大きく,被害者による切実な訴えが現在の医療体制や福祉制度の確立(ひいては感染拡大抑止)に大きく貢献した。しかしその一方で,やはりHIVと血友病患者は強く結びつけられてしまった。その後1996年に治療法が確立し,薬害エイズ裁判が和解決着してからは,HIV・エイズに関する報道は減少し,HIV・エイズの正しい情報やイメージがアップデートされる機会が少なくなってしまったのは,やむをえないのかもしれない。

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