【非定型抗精神病薬に比しハロペリドールでは7日間の死亡リスクが上昇する可能性がある】
定型・非定型の抗精神病薬の安全性比較は,高齢の認知症患者の行動症状などで検討されており,外来患者や介護施設入居者では定型抗精神病薬による死亡リスクの上昇が報告されている。一方,入院患者での安全性評価では,せん妄の管理が最も良い指標になるが,十分に検討されていない。FDAによるせん妄治療の承認薬はなく,せん妄のガイドラインでも推奨の抗精神病薬は一貫していない。しかし,抗精神病薬はいずれも心血管系への悪影響の可能性が指摘されており,心血管疾患による入院患者への抗精神病薬の投与は,有害事象を発生しやすい可能性がある。
700以上の病院から収集され,全米の入院症例の20%をカバーするデータベースを用いて,2003~14年に急性心筋梗塞で入院しハロペリドールまたは非定型抗精神病薬(オランザピン,クエチアピン,リスペリドン)のいずれかを投与された18歳以上の患者6578人を対象として,当該薬投与後7日間の死亡率を評価した研究1)では,ハロペリドールの非定型抗精神病薬に対する死亡の調整ハザード比は1.50(オランザピンで1.59,クエチアピンで1.79,リスペリドンで1.51)であった。投与と死亡の関連は,投与後4日目までが最も強かった。
急性心筋梗塞患者へのハロペリドール投薬後7日間の死亡リスクは,非定型抗精神病薬より上昇する可能性が示唆された。心血管系の併存疾患を持つ入院患者にハロペリドールを投薬する際には考慮が必要であろう。
【文献】
1) Park Y, et al:BMJ. 2018;360:k1218.
【解説】
佐藤泉美 京都大学薬剤疫学